京都商店街のビックリ街興し オタクにモテモテの理由

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   アーケードもない普通の京都の商店街が、本来の名前「801」をもじって「やおいちゃん」というキャラクターを作ったところ、ホームページにアクセスが殺到して回線がパンクした。東京・秋葉原からもオタクが深夜バスを利用してやって来るようになった。オタク用語「やおい」(美形の男性同士が恋愛関係になる)ではないか、とネット上で勘違いされたのがきっかけだ。

   その商店街は京都市にある「御薗橋801(ハチマルイチ)商店街」。客足が落ち、店舗の閉店が続き、活性化策の一つとしてキャラクターを考えた。京野菜・加茂ナスのイメージでデザインし、名前を公募したところ「801」にひっかけて「やおいちゃん」に決まった。

「腐女子」を題材にしたマンガ本が出版される

「御薗橋801(ハチマルイチ)商店街」のウェブサイト。右側のキャラクターが「やおいちゃん」
「御薗橋801(ハチマルイチ)商店街」のウェブサイト。右側のキャラクターが「やおいちゃん」

   デビューは2005年12月3日。すると「やおいちゃん」はオタク用語の「やおい」から命名されたのではないか、と、ネット上の話題になっていく。そして、06年1月22日には、同商店街のホームページに2万件のアクセスがあり、京都市から借りていたサーバーがパンクした。現在、1日のアクセス数は12万7千件以上ある。
   そして、同商店街の存在感を決定付ける「事件」が起きる。「腐女子」を題材にした「やおいちゃん」が登場するマンガ本の出版だ。

   毎日新聞のウェブサイト「まんたんウェブ」の07年4月6日の記事の見出しはこうなっている。

「京都の商店街のマスコットが“腐女子”に? 思わぬまちおこし」

   記事は概ねこんな内容だった。

   「腐女子」というのは「やおい」を好むオタク女性のこと。ネット上で「やおいちゃん」が登場するギャグマンガが人気になり、06年末に「となりの801(やおい)ちゃん」(作:小島アジコ)として出版された。主人公が「腐女子」で、オタクネタで興奮すると背中のチャックが開いて「やおいちゃん」が登場する。マンガ本には「京都市御薗橋801商店街公認」と書かれ、巻末には商店街の紹介が書かれている。出版した宙出版によれば「15万部売れる」ヒット。マンガを読んで商店街を知った人が非常に多いのだ。
   ただし、このマンガ本の出版がすんなりと決まったわけではない。宙出版の編集者、中江陽奈さんが商店街に出版の許可をもらいに行った際に、

「昔ながらの商店街ということもあってか『腐女子って何だ?』『やおい、って何だ?』と色々質問されまして、『そんなイメージが付くのはイヤだ』、と出版に反対される関係者の方もいました」

J-CASTニュースに話した。中江さんは商店街と10回以上もの話し合いの場を設け、一ヵ月半にわたる交渉で出版許可を得た。

秋葉原から深夜バスでオタクの団体が買い物に来た

   キャラクター制作とマンガ本の出版を意欲的に進めた1人が同商店街振興組合理事長の池田明弘さんだ。「やおいちゃん」人気がこんな形で広がることは予想もしてなかったようだが、マンガ本の出版については明らかに狙ったものだったようだ。池田さんはJ-CASTニュースの取材に、

「ネットで話題になっていて、商店街の認知度が高まっていることは確か。(読者層である)若い人に商店街が、『やおい』『腐女子』と関連付けられても、どっちでもいい。とにかく一度世に出せ!と、反対する人を説得しました。結果的に街興しになっていますし、反対した人も出版してよかったと思っているはずです」

と話した。出版1週間後、東京・秋葉原から深夜バスを使って商店街にオタクの団体が買い物に来た。ミクシィ(mixi)などにも「やおいちゃん」を応援するコミュがあり、メンバーが誘い合って訪れる例もあるのだという。「やおいちゃん」グッズも豊富で、トレーナーからバッグ、缶バッチ、酒などもある。ネットで通販では、売り切れている商品もある。また、「キャラクターを採用して全国で売り出したい」という申し出もメーカーから来ている。

   ただし、商店街自体の売り上げが伸びたとか、来街者が目立って増えた、というところまではいっていないようで、これが悩みだ。池田さんはこう話した。

「私達のキャラクターが全国で販売され広がっていくのは嬉しい事ですが、あくまで商店街の『特産物』なんです。だから全国どこでも買えるとなったら差別化が図れなくなります。まぁ、キャラクター1つで商店街の売り上げが伸びるほど商売は甘くはないと思いますが、とにかく有名になってきていますので、これからじっくりと『やおいちゃん』を育てていこうと思っているんです」
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