東京都世田谷区に住む59歳の、ふつうの主婦が、亡くなった母親の遺産を元手にFX(外国為替証拠金取引)で3年間に4億円を稼いでいた。こんなに儲かるFXっていったいなんだ!
10万円の元手で、100万円の取引をする
儲かるFXって何者?
主婦は儲けを申告せずに、東京国税局から所得税法違反(脱税)の疑いで東京地検に告発されたと、2007年4月13日付の朝日新聞や読売新聞などが報じた。
「FX」とは、証拠金を担保に最大200倍の外貨を売買して為替差益を得る金融取引。たとえば、1万ドルを買おうとした場合、1ドル=120円であれば通常120万円が必要になるが、FXであれば、FX会社や証券会社に証拠金(担保)を積むことで1万ドルを買うのに、10万円程度で済む(最低保証金は証券会社等で異なる)。
10万円の元手で、1万ドル=100万円の取引をするとき、「レバレッジ10倍」という言い方をするのだが、少ない元手でレバレッジを効かせて大きなお金で取引できるのがFXの魅力というわけだ。
ゼロ金利を脱したとはいえ、日本はまだまだ低金利。加えて最近の円安基調から、いまやFXは個人投資家から熱い視線を浴びている。
FXの場合、利益が20万円を超えると申告義務が発生。ところが、株式投資にはある、証券会社等が投資家との取引記録に関する調書の国税局への提出義務がFXの場合はないため、投資家がFXで得た利益は基本的にはわからない。
東京国税局は「市場取引分については証券会社等から取引記録の申告がありますが、相対取引の場合は会社側に申告義務はありません。ただ、FXは相対取引のほうが多いんです」と説明する。所得隠しがばれるケースとばれないケースがあるというわけだ。
この主婦の場合、相対取引だったが、発覚した経緯について東京国税局は「それはお答えできません」と答えた。
「理論上は4億くらい勝てるかも」
それにしても、3年間で4億円とは凄腕の外為ディーラーもびっくりである。ネットに集まったFX投資家は、
「OTC(相対取引)であれば、(所得を申告しないと)ばれないって、初めて知った」
「あるとき(証券会社等に)調書の提出義務が発動されたらバレバレになり追徴…ひえー」
「いったい、どこまでバレているんだ!」
「ほとぼりが冷めたらぜひ本を書いてほしいね」
と、騒然となっている。
なかには、「遺産が1億円として、年利50%の運用であれば、単純にレバレッジ10倍で…2002年くらいから円安の右肩上がりの相場が続いたし…」と、この主婦の投資行動を冷静に分析し、「理論上はそれぐらい勝てるかも」と指摘する投資家もいた。
「FXが告発に至ったケースは今回が初めて」という東京国税局。ある女性フィナンシャルプランナーは、「確定申告のときなど、税務署の方にFXといってもきょとんとしていて、明らかに勉強不足です。一方でFXの所得はばれないと思っている個人投資家は多くいると思いますが、今後FX人気が高まれば、税当局もしっかりみていくでしょうから、きちんと申告したほうがいいでしょうね」と話している。