テレビ信州で2007年3月30日に放送された「情報ワイドゆうがたGet!」の特集コーナー「春うらら!花の里のんびり散歩!」で、毒があるフクジュソウのてんぷらを紹介し、女性リポーターがこれを食べてしまった。テレビ信州は「山野草に詳しい人の紹介だった。毒があるとは知らなかった」という。幸いリポーターの健康に異常はなかったというが、場合によっては「春うらら」どころではない事態になるところだった。
視聴者からの指摘で判明
テレビ信州のHPトップ画面で、3月30日放送の「情報ワイドゆうがたGet!」に関する訂正文を掲載している
この番組では長野県内のある蕎麦屋をリポーターが訪れる。そこで「食べる花」としてワサビやフキノトウなどの野草とともにフクジュソウが紹介されて、そのてんぷらを女子リポーターが食べた。 この場面の放送後すぐテレビ局に、
「フクジュソウは『毒草』だ」
という視聴者の指摘が相次いで寄せられた。局側は30分後に同番組内で訂正するとともに、局のホームページにも掲載した。
なぜ毒草を紹介してしまったのか。J-CASTニュースがテレビ信州番組制作担当にたずねると、
「山野草に詳しく、TV出演も何度かある方にフクジュソウを紹介してもらった。番組は複数回チェックを行っているが、フクジュソウが危険だということについては、スタッフ一同全く知らず、疑いを持たなかった」
と答えた。
フクジュソウを紹介したのは、女子リポーターが毒草を食べた蕎麦屋だった。そこでは、
「以前から根に毒があるのは知っていたが、花にもあるとは知らなかった。視聴者に誤解を与え、申し訳なかった」
と話している。
「フクジュソウのてんぷら」は、この蕎麦屋の通常メニューにはなく、局側の依頼で、家庭料理として紹介したのだという。
「食べたことがあるから」を信用
この蕎麦屋についてテレビ信州番組制作担当は、
「何度もテレビに出演している人だったし、当人が以前にフクジュソウの花を食べていたと言っていたから信用した」
と、説明している。
毒草含め薬用植物に詳しい東北薬科大学の吉崎文彦教授(生薬学)は
「根の部分の毒性が強く、誤って食べてしまうと心臓麻痺などを起こし死に至ることもあるが、根だけでなく茎や葉、花など植物すべての部分にも毒があるので、食用にはしない」
と、フクジュソウの危険性を指摘した。
食べる量や健康状態、年齢などにより発症の様子は異なるので、今回のリポーターは「不幸中の幸い」ということなのだろう。
独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構のHPでも、フクジュソウは全草に有毒物質を含んでいるし、食べた場合の症状は、まず嘔吐、下痢などの消化器障害が現れ、ついで、脈拍が不規則になったり、呼吸困難になったりすると解説している。
この問題についてテレビ局側から事情を聞いた長野県食品・生活衛生課は、
「放送局の意図で企画を組んだのだから、局側の知識不足や確認不足は否めない」
と言っている。