最近、電車の中や駅周辺で「キレた」乗客をよく見かけませんか。携帯電話の使用、痴漢、飲食などを巡る車内でのトラブルが急に増えている。ケンカや暴力行為も少なくない。公共の場という意識が消え、「電車や駅は無法地帯化している」といってもおかしくない荒れようだ。
東京メトロ丸ノ内線で2007年3月7日午後3時50分ごろ、車内で乗客同士の口論がヒートアップしたために車掌が止めに入り「国会議事堂前駅」で約6分停車した。電車の遅れは午後8時過ぎまで続き、帰宅ラッシュの時間帯でもあり乗客には非常に迷惑な話だった。
こんな話はいまや日常茶飯事だ。
06年度では、31.2%が「マナー悪化した」
電車の中で「キレた」乗客を見かけませんか?
駅と電車内での迷惑行為が増えていることを示すものに、日本民営鉄道協会が毎年発表している「駅と電車内の迷惑行為ランキング」がある。
「駅や電車内でのマナーは改善されたと思うか?」という問いに、05年度は24.7%が「以前より悪化した」と答えた。06年度を見ると、31.2%が「悪化した」と回答するなどひどくなっている。迷惑と感じているベストテンは座席の座り方、携帯電話の使用、ヘッドホンステレオの音漏れ、乗降時のマナー、荷物の持ち方・置き方、電車内で騒ぐ、女性の化粧、所構わず電車の床に座る、車内等での飲食、環境美化に努めない人が多いと続く。電車内でよく見る風景だ。
産経新聞の大阪版では07年1月11日付けに「『溶けゆく日本人 モラル破壊の惨状』(3)車内での振る舞い」という記事を掲載した。見出しは「自分の部屋のつもり?」。
「電車内の狭小な空間は、現代社会の1つの縮図なのだろう。人目もはばからず抱擁する男女、朝食代わりのパンを口にほおばる若者、お年寄りを平気で立たせる人々…。通底するのは『自分本位』という4文字だ」。この記事には東京・広尾駅ホームのベンチで化粧をしていた飲食店の女性従業員(22)を無職女性(65)が注意したところ、女性従業員が腹を立て無職女性の肩を揺さぶり、結果、入ってきた電車に接触させ大怪我を負わせた話や、電車内に座り込んでいる男子高校生に注意したJR北海道の車掌に対し、親から「客を怒鳴るとは何事か」と電話がかかってきたことなどが紹介されている。
「公共の場なのに『自分の場』と思う人が増えた」
毎日新聞の07年2月17日付けの地方版には、「津軽鉄道」のストーブ列車の話題が載った。最近は、そのストーブで、肉や魚を焼く人がいるのだという。
日本民営鉄道協会の広報担当者は、自身の体験でも、電車やホームで口論したり殴りあったりするなど乗客が「キレる」のを見ることが多くなったという。J-CASTニュースの取材に対し、
「公共の場なのに『自分の場』と思う、自分がよければいいという人が増えたからではないでしょうか。混雑している車内で携帯やゲームを平気でやったりしている。そしてケンカするのは自己主張が強い人なのかもしれません」
と話した。
もっと電車内でのトラブルについて東京メトロ、JR東日本の広報にJ-CASTニュースが取材したところ、両社ともに「トラブルの増減に関するデータはない」という。「ケンカが起きても(駅員が止めに入る前に)回りの乗客が静止するか、逃げていく場合があるため、件数の集計は難しい」(JR東日本広報)からだ。