2006年末、官公庁に「自殺予告」の文書が送られてくる例が相次いだが、青森県では、これがいたずらだと判明、文書を作った男は「業務妨害」の罪に問われて逮捕・起訴された。「自殺予告」は「差出人が誰なのかも、いたずらだったかどうかも不明」というケースがほとんどだが、「いたずら」だと断定されるケースは異例だ。一体、何が起こったのか。
騒動が起こったのは、八甲田山の東側に位置する、青森県
全生徒323人の所在確認を毎日行う
06年11月には、文科相が「いじめをすぐにやめよう」と、異例の呼びかけを行った
当時、文部科学省に自殺予告の手紙が送られてきて、全国的にこの問題が注目を浴びていたこともあって、学校側は対応に追われた。同校によると、1回目の紙が貼られてから、休日を含めて約1週間にわたって、電話、メール、家庭訪問などの手段で、全生徒323人の所在確認を毎日行った。その結果、所在不明になった生徒はいなかった。
同校では06年10月、いじめ関連のカウンセリングを行ったばかりだったが、この文書を受けて、授業のうち数コマを費やして、さらに個別面談を実施するなどした。これだけの措置を行っても、いじめの様子は見られなかったという。それに加えて、紙に書かれていた要求に応じて、町内の公園に2度にわたって出向いたが、公園には子どもの姿は見られず、この紙は「いたずら」であると断定。学校は、この騒動で多大な迷惑を被った形だ。
同校では、騒動の影響について
「11月から12月は、在校生は文集作り、卒業生は卒業アルバム制作で忙しい時期。今回の件で、この作業日程を後ろにずらさざるを得なくなった」
と話している。
青森県警は目撃情報などをもとに捜査を行い、07年1月11日、同町内の無職・石田龍治容疑者(36)を偽計業務妨害の疑いで逮捕した。つまり、いたずらによって、学校などの業務を妨害した、というわけだ。携帯電話に勝手に宣伝メールを送信していた業者が、この罪で逮捕されたこともある。
「学校が本気でいじめに取り組むかを見たかった」
同容疑者は起訴され、3月6日に青森地裁で初公判が開かれた。実は、被告は寺院に忍び込んで現金を盗んだなどとして建造物侵入、窃盗の罪にも問われており、これとあわせて検察側は懲役3年6ヶ月を求刑した。
被告側は
「いじめにあった経験から、学校が本気でいじめに取り組むかを見たかった」
と、学校の業務妨害が目的ではないと主張、寛大な判決を求めた。公判は即日結審し、判決は、3月26日の予定だ。
青森のケースでは、ちょっとしたいたずらが重大な結果を招くことになりそうだが、相次ぐ「自殺予告」の発端になった文科省宛の手紙の「その後」は、どうなったのだろうか。
手紙の差出人の調査などの対応にあたった東京都教育庁指導部では、当時をこう振り返る。
「『文書を出した生徒を救いたい』という一念でしたし、『むしろいたずらであってほしい』という思いで取り組んでいました。現段階でも、(この文書は)誰が書いたのか分かりませんし、これがいたずらだったかどうかも分かりません」
「もしいたずらだと判明したらどうするか」
というJ-CASTニュース記者の問いかけに対しては、刑事告訴などについては否定的だったが、
「仮にこれを書いた人が名乗り出たとして、『実はいたずらでした。ごめんなさい』といったレベルでは、もはや済まされない状況だとは思います」
と話した。