景気回復の影響で、自衛隊が採用活動に苦戦を強いられているという。広島では、採用試験を実施しても予定数に届かず、異例の4次募集まで行った。各地で人材の確保に工夫をこらすが、反発も強く、各地でトラブルも起こっている。
十分な人数が確保できず、異例の4次募集
広島地方協力本部のウェブサイトでは「第4次募集中」の文字が目立つ
2007年2月25日の中国新聞では、「二等陸海空士(二士)」の採用活動が苦戦している様子を伝えている。この職種は主に高卒向けに募集され、2年から3年の任期を一区切りとした任期制。採用活動は、全国に設けられた拠点ごとに行われており、「広島地方協力本部」では、07年春に120人の採用を予定している。それに向けて、06年9月、12月、07年1月の3度にわたって採用試験を行った。この時点で150人に内定を出したが、民間企業に流れるなどの内定辞退の数を考慮すると、十分な人数が確保できないとみて、異例の4次募集に踏み切った。
同新聞によると、応募数は2年前に比べて約36%も減少しているといい、その背景として「(海外派遣は)危険なので自衛隊に行かせたくない」という声が保護者から上がっていることを紹介している。同本部では、来年以降は試験日程を前倒しするなどの対策を講じるという。
全国各地の自衛隊の拠点でも、高校生の採用活動を熱心に行っているが、それにともなって、トラブルも起きている。
「青田買い」として批判浴びる
05年には大阪地方連絡部堺出張所(大阪府堺市)が高校生向けに送っていた、勧誘用のDM(ダイレクトメール)が市議会で問題視された。文部科学省や厚生労働省の指導で、高校生への採用活動が解禁されるのは、3年生の9月以降とされていたが、2年生にもDMが送られていたのだ。これが「青田買い」だとされた。同出張所では、「住民基本台帳から書き写して名簿を作る際の転記ミス」と説明、「間違って送られた方には申し訳ない。再発防止に努めたい」と陳謝している。
さらに、自衛隊への反発が強い沖縄では、DMを送ること自体への風当たりも強い。地元紙「琉球新報」では、06年8月15日、この問題を報じ、名簿の作成に住民基本台帳の閲覧制度を活用していることを
「個人のプライバシーを侵している」
と批判する弁護士の声などを紹介している。
なお、冒頭に出てきた、広島での4次募集の採用試験は2月28日に行われたばかりで、合格発表は3月5日に予定されている。果たして、4月には予定の人数が集まるのか。