「自分だったら言えないことをスパッと言ってくれる」
いまの世相を映したどこにでもあるような会社。その中で、「お時給3000円」の“スーパーハケン”大前春子だけが「わずらわしい人間関係は一切排除」というモットーのもと不遜な態度をとり続ける。
たとえば、最初の面談では「私を雇って後悔はさせません。3ヶ月間、お時給の分はしっかり働かせていただきます」と大見得を切り、「出たくもない歓迎会に出て、したくもないお酌をさせられるくらいなら、クビにしていただいて結構です」と就業後の飲み会は断固拒絶する。
派遣社員を差別する正社員に対しては、「働かない正社員がいてくれるおかげで、私たち派遣はお時給をいただけるんです。それが何か?」「私は会社に縛られるような奴隷にはなりたくなりません」と見事なカウンターパンチを食らわせる。
このような春子節には「自分だったらなかなか言えないことを、春子がスパッと言ってくれるところが気持ちいい」(30代の事務職OL)という爽快感がある。
もちろん春子のビッグマウスも、能力と行動の裏づけがあればこそ。高いパソコンスキルを生かして企画書をあっという間に作り上げてしまうだけでなく、クレーン車の操縦やエレベーターの点検、助産師といったガテン系の資格も履歴書に書ききれないほどもっている。そして、社内でトラブルが起きるたびにスーパーマン的な活躍をして、絶体絶命のピンチを救ってみせるのだ。
ちなみに、派遣会社のテンプスタッフによれば、春子のような時給3000円以上の派遣社員もIT業界のシステムエンジニアなどの分野に存在するそうだが、「春子ほど資格や経験が多彩な派遣社員はいないと思われます」。