銀行が切り捨てる「両替」 参入したセブン&アイの計算

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   セブン&アイホールディングス(HD)は2007年2月13日、トヨタグループの金融機能を統括するトヨタフィナンシャルサービス(TFS)と共同で新会社を設立し、中小小売業やサービス事業者を対象とした営業用釣り銭(両替)サービスなど新しい金融サービス事業を立ち上げる方向で具体的な検討に入った、と発表した。
   「紙幣を小銭に替える、一方通行の安価なシステム」(セブン&アイHD広報センター)を独自開発し、街の小売店や飲食店など約340万の一般事業者の”現金ニーズ”に対応する。新会社の設立は今春をめど。両社は早急に「新会社設立準備室」を設置する。

   提供するサービスは「釣り銭交換機サービス」と「釣り銭宅配サービス」。交換機サービスはセブンイレブンの店舗内に専用の両替機を置き、商店主が来店して両替する方法。宅配サービスは、あらかじめ必要な釣り銭を連絡し契約している警備会社などが釣り銭を持ち込む方法で、「売上げ規模によって、使い方を選んでもらえる」(同社広報)としている。

「採算合わないから、大いにやってもらっていい」

セブン&アイHDは「新サービスは採算ベースに乗る」と話す
セブン&アイHDは「新サービスは採算ベースに乗る」と話す

   小売店などでは、釣り銭が不足した場合には店主が金融機関に出向いたり、銀行や信用金庫の得意先係が集金・配送するなどして確保していた。銀行等では、「とにかく手間のかかる業務で、有料化や手数料の引き上げを進めているところ」(地銀の幹部)という。
   現在、両替機の利用では、地元の商店主等には「利用カード」を年間1万円で販売して、実際の利用時は無料で対応する方法や、紙幣・硬貨の種類、硬貨の重さなどで都度徴収する方法など、金融機関によって手数料のとり方や水準は異なる。

   東京都内のある信用金庫の幹部は、

「(有料化は)なかなか顧客の理解が得られず遅れぎみ。とくに硬貨は重たい、細かいので手間がかかるんですよ。とてもじゃないが採算があわない」

   と説明する。融資の有無など取引ぶりによって対応しているともいうが、

「最近は営業店に現金をできるだけ置かないようにしていることもあって、持って来てもらうことも避けたいほど」

   という。
   セブン&アイHDとTFSが両替業務に進出することについて、別の信用金庫の役員は「大いにやってもらってかまわない!」という。「手数料水準も我々よりも高めに設定しないと収益的に折り合わないだろう。結果的に、当方の有料化も進む」と歓迎する。

「安価で提供、社会的意義ある」とTFS

   銀行や信用金庫が敬遠する両替業務に、しかも新会社を設立してまで注力していくことにTFSは、「釣り銭サービスを安価で提供することの社会的な意義は大きい」(広報担当者)と、公共性の高さを強調する。セブン&アイHDは傘下のセブン銀行で、安価なATMの開発で成果を上げていて、同社との協力による「安価な機械の開発とオペレーションのローコスト化で低廉なサービスは実現できる」と話す。
   実は、セブンイレブンでの両替サービスは「顧客ニーズなどを検証する目的」(同社広報)で、東京都内の5カ店で試行的に進めていた。そのひとつ、秋葉原北口店では紙幣5,000円、1,000円(10枚ごと)に50円の手数料が必要。包装硬貨500円、100円(いずれも50枚ごと=1本)で60円。10円(100枚ごと=2本)が50円、1円(100枚ごと=2本)が30円で、その界隈の信用金庫よりもやや割高の設定だ。
   ただ、同社は「試行店の手数料水準が、そのまま新会社で適用されるものではない」としている。
   最近はメガバンクで店舗閉鎖が相次いだり、ATMでの無人化が進み、近所に店舗がない地域もあるので、「商店等のニーズは少なくない」(東京都内の信金幹部)との見方はある。
   「セブンイレブンも小売業だから、小銭の扱いには頭を痛めていた。有効利用を考えてはいただろうし、その成果というか、苦肉の策なんじゃないの」(同氏)と、お手並み拝見といったところ。
   採算面について、セブン&アイHDは「1日、数十件程度の利用で採算ベースに乗る」と話している。

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