歌手の森進一さんといえば「おふくろさん」。これが、もう聴けなくなってしまうかもしれない。作詞した川内康範さんに無断で、歌の冒頭に他の作詞家が作ったセリフを付けて2006年大晦日の「紅白歌合戦」などで歌った、という理由からだ。しかし、このセリフが付けられたのは今から約30年前。森さんは「謝る理由がわからない」などと記者に話し、両者の言い分は食い違ったままだ。
「盗作と同じなんだ。人間として失格」
「おふくろさん」、もう聴けなくなる?
騒動の経過はこうだ。川内さんが06年大晦日の「紅白歌合戦」をビデオで見て、森さんが歌う「おふくろさん」の冒頭に、自分が作詞したのではないセリフが付いていたことを発見した。森さんサイドに釈明を求めたところ、07年2月17日に話し合いの場を持つことになったが、森さんが体調不良を理由にドタキャン。これで亀裂が深まり07年2月20日に川内さんと森さんがそれぞれ記者会見を行った。
川内さんは、この問題については10年ほど前から森さんに伝えていたとして、「やっていることは作家同士なら盗作と同じなんだ。人間として失格」と森さんを激しく非難。「僕の志と違ったことをやる者にはオレの作品は一切歌わせない」と森さんに言うと、居直って「結構だ」と言ったという。
一方の森さんは記者団に対して、川内さんとは「直接話していない、事務所の職員が対応した」として、
「突然歌わせないといわれ、それは本当に僕も困るんですけど。えぇ、もうビックリしましたよ」
「先生が一言『いいよ』といってくれれば(中略)大きな心で見守ってほしい」
などと話した。
ジャスラックは「著作権法違反」という見解
07年2月21日には、川内さんは日本テレビ系「ザ・ワイド」の電話インタビューに答え、
「(森さんは)嘘八百をならべているのだから、そんなヤツと会ってもしかたない」「(解決策は)もう無い」そして、「表立って(訴訟を)やるつもりはないが、僕の歌を(森さんが)歌ってはいけないとジャスラックに届けている」と話した。一方の森さんは同日、記者団に対して、
「先生の会見を見て、あんなにご立腹だとは思わなかった。できるだけ早く先生にお会いして、自分の気持ちを伝えたい」
と、事の収束を図りたい気持ちを話した。
さて、完成してヒットした歌の冒頭に、違う作詞家のセリフを付け歌うと著作権違反になるのだろうか。弁護士によって違反、違反とはいえない、など2つに分かれているが、ジャスラック広報はJ-CASTニュースの取材に対し、著作権法20条に「同一性保持権」があり、著作者人格権侵害にあたるのだという。
「川内先生が作品を改変することに同意していないため、著作権法違反にあたります」
なのだそうだ。