日興コーディアルグループが上場廃止になるか否かをめぐり、マスコミ各社の報道合戦が熾烈さを増している。監理ポスト入りした日興の扱いを東京証券取引所が最終的に判断するのは2007年3月中旬とみられる。最終判断のXデーがいつなのか、東証の正式な発表前に情報を入手して「特ダネ」を書くのはどこなのか。マスコミ各社は戦々恐々としており、Xデーに向けた前哨戦では早くも「フライング」記事も散見されるなど、情報合戦が続いている。
朝日の提訴記事は「フライング」との見方も
上場廃止をめぐってマスコミの報道合戦が加熱しそうだ
2月9日付の朝日新聞朝刊の1面に「日興、前経営陣を提訴へ 不正決算 前社長の責任も検討」の見出しが躍った。報道によれば、「日興の責任追及委員会が、不正に関与した元役員らを相手取り、損害賠償請求訴訟を起こす方針を固めた」という。元役員は山本元・前執行役常務と日興プリンシパル・イ ンベストメンツの平野博文・元社長が確定し、「有村純一・前グループ社長についても検討を進める」という。
これが朝日の本当の特ダネであれば、当然、各紙が夕刊で追いかけるはずだが、それはなかった。朝日の記事は「フライング」ではないかとの声も業界ではささやかれている。
実は、日興が山本・元常務と平野・元社長に損害賠償請求訴訟を起こす可能性は極めて高い。それは弁護士らで組織した日興の特別調査委員会が両氏の責任を明確に指摘しているからだ。有村・前社長については「重大な経営上の責任がある」と指摘したものの、「クロ」と目された山本、平野両氏に比べると、有村氏は「灰色」のままだ。
「上場廃止」には勇み足は許されない
従って、日興の責任追及委員会がクロの山本、平野両氏を提訴するのは当然とみられ、有村氏についても「今後、検討する」のは当たり前というわけだ。つまり「状況証拠的には朝日程度の記事なら、誰だっていつでも書けた」というのが、マスコミ業界の評価だ。
この程度の記事であれば、「当たらずとも遠からず」で許容範囲かもしれないが、日興の上場廃止か否か、となると全然違う。「上場廃止」と「上場維持」はたった二文字の違いだが雲泥の差で、勇み足は許されない。東証の西室泰三社長は、日興が訂正報告書を提出する2月末から、結論を出すまでに「2週間程度かかる」と表明している。マスコミにとっては、日興が訂正報告書を提出した翌日から、息の抜けない神経戦が本格化するだけに、その報道ぶりには今から注目だ。