恋人たちが愛を誓い合う――そんな2月14日の「バレンタインデー」の習慣に、なんだか今年は異変が起きそうだ。渋谷では、「バレンタイン粉砕デモ」が起こり、海外でも「アンチバレンタイン」のTシャツやカードまでが出回っている。好きな人だけやっていればいい、とも思えるバレンタインだが、急に風当たりが強まってきた。
2007年2月11日、渋谷の街におかしなデモ隊が出現した。政治的スローガンを掲げるのが一般的な「デモ」だが、なにやら彼らが掲げるのは「バレンタイン粉砕」なのだ。彼らが配布するビラには次のように書かれている。
世界各国で「アンチバレンタイン」の機運
今年はバレンタインチョコにも逆風の機運!?
「バレンタインに向け情勢が緊迫化する中、反動的カップル集団は非モテ・喪男(編注:モテない男)・童貞のフラレタリア階級に対しさらなる弾圧を深めている。恋愛ブルジョワ階級は恋愛普遍/至上/資本主義によって人々を搾取と収奪の限りを尽くし階級的な諸矛盾を爆発させる状況を示しているのだ」
「義理チョコに対する三倍返しといった明らかな収奪と言える行為を強要する連中に徹底的に思い知らせなければならない。そう、我々はバレンタインを拒否すると非妥協的に闘わねばならない。同志諸君、今こそ立ち上がる時が来たのだ!!万国のフラレタリアよ団結せよ!」
このデモを決行した革命的非モテ同盟のHPによれば、この「バレンタイン粉砕デモ」は「歴史的大成功」をおさめたようで、「街行く反動カップル集団に徹底的な恐怖を与え戦慄せしめ」、「バレンタインに抑圧される人民大衆には革命的意志を伝える」ことができたのだという。
「西側」世界に「バレンタイン粉砕主義」革命の波が押し寄せているのかは分からないが、どうやら世界各国にも「アンチバレンタイン」の機運は高まっている。
AFP通信によると、米オハイオ州拠点のカード業界大手American Greetings社は今年、バレンタイン用に製造するカード2500種類に、10種類の「アンチ」バレンタインデーのランナップを加えたという。さらに、オリジナルTシャツなどのドロップシッピング業者最大手の「カフェプレス(CafePress)」でも、バレンタイングッズとならんで「アンチバレンタイングッズ」の特設コナーをHP上に設置。「われ思うゆえに、われ独り身」「独り身の幸せとともに生きよう」といった、バレンタインを皮肉るTシャツが人気を集めているようだ。
とは言っても、日本のチョコ交換の文化はなくなるまい――そう思っている人も多そうだが、実はこの「義理チョコ」の風習は、現在ではなんとも評判が悪い。
男性の70%が「自分には無関係」
ハー・ストーリーが2003年に発表した「バレンタイン・デーについて」調査結果(500人回答)によれば、「義理チョコ」の交換をするのを「無意味」(「どちらかといえば無意味」含む)であるとしたのは、全体の40%で、男性については半数以上が「無意味」と回答した。2006年の東京電力のアンケートでも、「今年のバレンタインデーはあなたにとってハッピー?ゆうつ?」という質問に対し、女性の51%、男性の70%が「自分には無関係 何とも思わない」と答えており、「ハッピーな日」と答えた人を圧倒した。
どうやら思ったより「義理チョコ」は評判の良くない「さびし~い」存在のようだ。実は、「義理チョコ」を自粛する企業まである。
共栄火災海上保険では15年前から「義理チョコ」を自粛し、「バレンタイン あげたつもり もらったつもりチャリティ募金」を開始。女性社員にはバレンタインチョコをあげるかわりに、男性社員にはホワイトデーにお返しをあげるかわりに1口500円寄付金を募り、NGO団体を通して西アフリカの子供たちに寄付しているという。チョコの交換自粛同様に「強制」ではないが、毎年50~100万円ほど集まり、寄付金は総額で1,600万円を超えたという。
なかには「義理チョコ」自粛令にガッカリの男性社員もちらほらいるようだが、同社広報はJ-CASTニュースの取材に対し、
「(バレンタインのチョコ交換が)過熱気味で、やめたいと思っていた社員もいたようです。現在では定着し、いい取り組みだという意見が多いですよ」
と答えている。