費用や時間がかかるために訴える人は少ない
被害者が訴えを起こすのに最大のネックになっているのは「費用対効果」だ。今回の裁判は4年間続いていて、原告は計28回も裁判所に通っている。これに弁護士費用が加わるため、まるっきり「赤字」なのだ。こんなこともあって、5万人分が流出したのに、訴えたのは14人。
「今回の金額に全く納得していないし、控訴も考えているが、費用や時間がかかるために、控訴を申し出る被害者が出るかどうか」
と紀藤弁護士は言う。
アメリカにはクラス・アクションという代理人形式の訴訟制度がある。企業の行為によって多くの人が同様の被害を受けた場合、代表者が訴訟を起こすと、クラス・アクションに参加した全員が賠償金を受け取れる制度だ。
「日本でもクラス・アクション制度を導入しないことには、被害者は永遠に泣き寝入りということになりかねない。だから企業にはより高度な責任を負う、という姿勢が必要で、そのために何をすればいいかというと、賠償金を高くする、重い制裁を課すなどが必要なんです」
紀藤弁護士は企業に情報漏洩を防ぐための緊張感を与えることが必要だ、と強調する。