「名門」とされるフェリス女学院大学(横浜市)で、初のセクハラによる処分者が出た。セクハラを行ったとされる教員が学内委員会の調査に応じなかったほか、学長も「委員会の勧告を誠実に実行しなかった」として、譴責の懲戒処分を受けた。大学側は「セクハラは二度と許さない」としているが、処分を受けた側は「処分は内容・手続きともに不当」と反発、大騒動になっている。
「水っぽい服装」発言はセクハラ
ウェブサイトには、特に処分についてのアナウンスはされていない
神奈川新聞が2007年2月8日、経緯をこのように報じている。
「セクハラを調査する学内委員会は、被害女性(05年3月修了)に対し当時指導担当で学部長だった教授が『水っぽい服装』と発言したことをセクハラと認定。さらにこの教授と現学部長の教授が女性を中傷する二次被害があったと認め06年8月、女性に謝罪するよう学長に勧告したが、従わなかったという」
大学によると、2007年2月5日付けで、校内に「セクハラは許さない」旨のメッセージとともに、処分の内容を学内に掲示したという。今回処分された教授2名は「調査のための事情聴取に応じなかったため」、学長は「委員会の勧告に基づいて適切な措置を執らなかったため」という理由で、常任理事会、懲罰委員会の決定を経て、けん責の懲戒処分が決まったという。これまでは「表に出る前に、当事者が謝罪するなどして、事態が収束することが多かった」(同)といい、同大でセクハラが原因で処分が下るのも、学長が処分されるのも、初の事態だという。
同大によると、ハラスメントについての相談が寄せられると「ハラスメント防止委員会」に報告され、「調査委員会」での調査を経て、さらに「教授会」などで審議される体制になっている。実はこの「防止委員会」は、組織図上は校長の下にある。自らの指揮下にある組織の勧告に従わなかった、という理由で処分が下るのも異例だ。大学側は「規定に不備があった。現在、改正作業に取り組んでいる」としている。
適切な対応をした学長までも譴責処分に?
一方で、今回処分を受けた3人は、処分を不服として、横浜地裁に処分差し止めの仮処分を申し立てている。代理人のひとりである滝本太郎弁護士は、「学生の派手な服装を注意した際に『水っぽい服装』という発言があったのは事実。100指摘された(セクハラとされた行為の)うちの5を認めている」としながらも、「二次被害」については全面否定している(大学側は、「二次被害」の内容については公開していない)。学長が処分された経緯についても、「きちんと対応した。対応内容が納得されなかったのでは」と話す。さらに、「調査委員会」の調査が公正に行われなかったことを批判している。
「学院の責任者やハラスメント調査委員らが、調査前に申立人に『謝罪のために』申立人を遠隔地まで訪ね、さらに土産をもらってくるなど、調査・勧告の公正が疑われた。そこで調査委員2名の忌避を述べ、それでも出席して二次ハラスメントと目される行為はなかったと述べているのに文学部長ら2教授を事情聴取に応じなかったとして譴責処分とし、さらに適切な対応をした学長までも譴責処分にしたのである。大学の自治を揺るがすものであって大変遺憾である」
また、裁判所での大学側の対応もずさんだった、と主張している。
「2月5日実施の審尋手続きにおいては事情も知らぬ弁護士が復代理人として出席して答弁書以上のことはいえないなどと言うのみであった。学院に理がないことを示すものである」
大学側は、
「被害を受けた元学生の人権回復が第一、というのが基本的な考え方。学院ではセクハラは許さない」と強調した上で、「まだ仮処分が認められたという通知は届いていない」と話し、処分の正当性は裁判所の判断を待ちたい、という考えのようだ。