「アパグループ」が所有する京都市内の2ホテルの耐震強度が偽装されていた問題で、アパホテルの元谷芙美子社長は2007年1月25日、記者会見を開き、涙ながらに謝罪した。この名物社長、著書では「天真爛漫さ」を強調するが、「お金に厳しい会社ではないか」との声が挙がるなど、表と裏の顔が見え隠れする。
社長の天真爛漫ぶりが書かれているのは、01年1月に出版された、「私が社長です。―ホテル10,000室展開を目指すアパホテル社長の天真爛漫人生」という本。自身の社長としてのポリシーや、生まれてから就職、結婚し、社長に就任するまでの自叙伝的な内容が、200ページ以上にわたって、一貫してハイテンションな文体で綴られている。
夜遅くまで付き合わされる部下は大変
著書では「天真爛漫さ」を強調するが…
紹介されているエピソードも、ざっとまとめると、
「社長就任会見の時に『ホテル界のジャンヌ・ダルク』でいたい、と宣言」
「『下へまいりまーす!』と、『エレベーターガール』ならぬ『エレベーターオバサン』を演ずる」
と、威勢の良いものが並ぶ。住宅の営業をしていたときは、もっと強烈なエピソードを残している。こんな感じだ。
「夕方、部下と一緒に営業先を訪れ、キーパーソンが不在とのことで、深夜まで待たせてもらうことになった。待つ間、寿司をおごってもらったお礼に元谷社長が歌を披露することになり『カラオケ独演会』状態に。夜中に物件を案内し、契約が終わって帰路についたのは明け方の5時のことだった」
元谷社長が天真爛漫で、熱心なのは間違いなさそうだが、これに付き合わされる部下の苦労は、相当なものがありそうで、パワハラといわれかねない。トレードマークの帽子については、
「頭の上でメリーゴランドがくるくる回っている帽子や、本社の東京移転を記念に、東京タワーがてっぺんについた帽子もかぶってみたい」
とまで述べており、「天真爛漫」以上のものを感じる読者も少なくないかも知れない。