関西テレビ放送の「発掘!あるある大事典Ⅱ」の番組内容が捏造された問題で、思わぬ被害が生まれそうだ。番組をもとに編集された書籍の販売を中止する書店が相次ぎ、発売元に大量の返品がされる可能性が高まった。発売元の扶桑社も「異常事態」と受け止め、返品される「あるある本」を戦々恐々と待っている状態だ。
すでに「納豆ダイエット」の実験データ捏造が発覚した「発掘!あるある大事典Ⅱ」だが、ここにきてまた別の捏造疑惑が浮上している。
捏造疑惑が報道されたときから撤去始まる
「あるある」の相次ぐ捏造疑惑は、書籍の大量返品につながりそうだ
捏造が疑われているのは、「あるあるⅡ」の前身「発掘!あるある大事典」で、98年放送の「レタス食べると快眠につながる」という内容の特集。実際の実験ではマウスにレタスによる催眠効果が見られなかったにもかかわらず、「レタス汁を飲んだマウスは眠ってしまった!」のテロップを入れ、たまたま眠っていた1匹のマウスを映し出すなどして捏造した疑い。実験を担当した大学教授の証言で明るみに出た。さらに、06年2月放送の「みそ汁で減量する」という特集でも、米国の研究者の発言を捏造して放送した疑いがもたれている。
これにしびれを切らした書店側で、「発掘!あるある大事典」(扶桑社)の書籍を書棚から撤去するなどの判断をするところが相次いでいる。旭屋書店の大阪市内店舗の店長は、
「レタス(の疑惑)とかで、過去の番組内容についても捏造疑惑が報道されたときから撤去しました。販売されている書籍に実際に(捏造が疑われている特集が)収録されていますから。本来、差し止めでもない限り引き揚げたりするケースはないんですが、これほど問題になっておおっぴらには出して置けませんから、(撤去しようと)判断しました」
と明かす。同店長によると、自主的に撤去したあと旭屋書店本部から「全店返品」の指示が出されたという。
また、ジュンク堂書店のある店舗は、「テレビなどで(報道を)見て、在庫を撤去するか検討中です」としている。丸善、紀伊国屋書店、リブロの本部などでは、出版元から要請がないことなどから「返品」の指示は店舗にまだ出していない。しかし、店舗によっては店長が自主的に判断して、書籍を撤去する動きがある模様で、八重洲ブックセンターでは在庫の補充を中止するなどしている。
「調査報告」が出ないと返品の要請はできない
「あるある本」は97年からすでに6巻が発売されており、シリーズで計150万部以上発行したともいわれている。
戦々恐々としているのは発売元の扶桑社だ。同社広報は、J-CASTニュースの取材に対し次のように述べる。
「今日(29日)の報道などで、返品するところは増えるでしょう。このシリーズは去年(06年)が最後の販売で、それ以前にも(シリーズが)あるから返品されるのがどれくらいの数になるのかまったく分からないんです」
同社にはまだ返品される書籍はまだ届いていない。というのも、店舗から取次ぎ先に返品し、取次ぎ先が発売元に返品する、という手順を踏むため、扶桑社に書籍が届くのはだいぶ先になるのだ。また、出荷を停止したものの、書店への返品の要請も、出版者である関西テレビ側の「調査報告」がなければ決定できないのだという。ただ返品を待つのみの状態は「ほんとに異常事態」と頭を抱える。今回の捏造問題と「あるある」書籍の返品――「一番の被害者は扶桑社ではないのか」との質問に、広報担当者は
「そうかもしれませんが、視聴者や読者の方がいますから…」
と漏らした。