ニューヨーク証券取引所(NYSE)と2006年春から資本提携と業務提携の協議を進めてきた東京証券取引所が、提携協議開始から1年を迎える前に「成果」をアピールしようと躍起になっている。西室泰三社長は07年1月31日に訪米し、NYSEのジョン・セイン会長と会談し、「提携合意」を発表する意向だが、合意できるかどうか微妙なうえ、仮に合意できたとしても提携の中身は限定的で、市場が期待するサプライズはないようだ。事前にこの情報を入手した金融庁関係者から早くも失望の声が挙がっている。
「これから時間をかけて協議という合意」だけ
NYSEとの提携効果はあるのか?
今回、東証とNYSEが合意する提携とは、正確には「これから時間をかけて協議して行きましょうという提携合意」(東証関係者)に過ぎない。これでは、この1年間の交渉とは何だったのかと聞きたくなるが、東証関係者は「正式な協議のテーマを決めるための事前協議」と説明している。 月末の訪米に先立ち、西室社長は07年1月17日、金融庁に山本有二金融担当相を訪ね、これまでの経過と合意内容について説明した模様だ。山本金融相は10日、訪問先の米国で米証券取引委員会(SEC)のコックス委員長と会談した後、日本人記者向けに会見し、「西室社長が近くNYSEと提携で合意する」との趣旨の発言を行った経緯があり、西室社長は山本金融相に説明の必要があると判断したようだ。
東証と組んでも意味がないと思った?
ところが、金融庁が期待した提携のイメージと、実際の東証・NYSEの提携合意は、かけ離れたもののようだ。今回の提携合意には、資本提携は含まれず、これまでマスコミで報道された業務提携に限られるからだ。即ち、TOPIX(東証株価指数)に連動した上場投資信託(ETF)をNYSEに上場してもらうなど、相手国の株価指数に連動したETFの相互上場や、株式の相互上場、次世代システム開発の相互協力などだ。最近、一部で報道されたテロや停電時の有事対策の協力も盛り込まれる見通しだが、いずれにしても提携効果が期待される内容には乏しいらしい。 もちろん、今回の合意だけで両者の提携協議が終わるわけではなく、今後の協議継続で資本提携を含む新たなテーマが浮上する可能性はある。しかし、国際的に証券取引所の再編が急ピッチで進む中、事前協議に1年間かけた割には、成果が乏しいのは否めない。金融庁関係者の間では
「提携内容はつまらない。NYSEは東証と組んでも意味がないと気付いてしまったのではないか」
との声も挙がっている。真偽のほどは明らかでないが、もしもNYSEにとって、東証と提携するメリットが少ないため、今回の提携協議が進まなかったとすれば、アジアを代表する資本市場を自認する東証にとって、ゆゆしき事態であることは間違いない。