薄型テレビの覇権をかけた「プラズマvs液晶」の投資競争が、一段と激しさを増している。プラズマテレビのリーダー企業である松下電器産業は2007年1月10日、世界最大のプラズマパネル製造工場を兵庫県尼崎市に建設すると発表。対する液晶テレビ国内首位のシャープも同12日、液晶パネルの最新鋭製造拠点、亀山第2工場(三重県)の生産能力を予定より半年前倒しして2倍に増強すると発表した。背景には大画面テレビでの競争激化、急ピッチで進む価格下落があり、大画面テレビをより低コストで効率的に生産できる体制作りを競い合う構図となっている。
価格急落 液晶に押されてプラズマも
各社、薄型テレビへの投資にしのぎを削る
液晶テレビは大画面化が難しく、以前は50型以上の平均単価は100万円以上していた。それが、11月には一気に48万円に下落(調査会社のBCN調べ)したのだ。これに押される形で、米国の年末商戦では42型の松下製プラズマテレビが一時999ドル(約12万円)で売られるなど、液晶、プラズマ間の価格競争が激しさを増している。
松下が発表した尼崎市の新工場は、プラズマパネルの製造拠点としては国内5カ所目。投資額は2,800億円で生産能力は年産1,200万台(42型換算)と、この1工場だけで現在の同社の生産能力(同552万台)の2倍に相当する。昨年6月に大坪文雄社長に交代し、それまでの構造改革から成長路線にかじを切った松下にとって、プラズマは成長とブランドイメージを支える最重要商品なのだ。「薄型テレビは絶対に負けられない事業。ここで手をゆるめるわけにはいかない」。1月10日に記者会見した大坪文雄社長は力説した。
07年の年末商戦をにらんで
松下のこの動きに、ただちに敏感に反応したのがシャープの亀山第2工場の生産能力増強だ。同工場は昨年8月から稼動しているが、第8世代と呼ばれる大型サイズの液晶パネル基板を作れる世界で唯一の工場だ。その稼働で昨年末から42型以上の大画面テレビの販売を本格的に開始していた。1月12日の生産能力増強の発表では、7月に液晶パネル基板ベースで月産3万枚から6万枚に引き上げるとした。42型テレビ換算で年産576万台の規模になる。さらに08年中には月産9万枚まで生産能力を増強する計画で、07年以降の投資額は合計で2,000億円となる。
12日の記者会見でこれを発表した町田勝彦社長は「昨年の年末商戦では日米ともに42型や52型の大型サイズが飛ぶように売れ、供給不足を起こしてしまった。今回の増強で、今年の年末商戦は品不足を回避できる」と生産増強前倒しの狙いを説明した。
シャープはまた、7月にポーランドとメキシコの工場で、日本から輸出したパネルを使ってテレビの組み立ても始め、今年の年末商戦にむけた量産体制を整える。同社の07年度の液晶テレビ販売計画は06年度比50%増の900万台。付加価値が高い42型以上の大画面サイズの割合を06年度の12%から40%に高め、1台あたりの単価下落を15%にとどめる考えだ。