「2ちゃんねる」の管理人、西村博之さんの全財産の仮差し押さえ申し立てが2007年1月12日に東京地裁に出された。差し押さえの対象が「2ちゃんねる」のドメインにまで及んでいるため、「閉鎖になるのではないか…」とネット上で騒然となっていている。閉鎖の可能性はあるのか、ないのか。
最初に報じたのは07年1月13日付の夕刊フジ。一面トップに「2ちゃんねる停止」という大きな見出しが躍った。早ければ来週にも強制執行されるという。同紙によれば仮差し押さえを申し立てたのは、ひろゆきさんに対して約500万円の債権を持つ東京都の会社員の男性(35)。男性は「2ちゃんねる」上に自身や家族の実名、住所を晒され誹謗中傷を受けたとして、06年8月に、管理人のひろゆきさんに対し、書き込み者の情報開示を求める申し立てを東京地裁に出した。
「ドメインを差し押さえた事例など聞いたことがない」
2ちゃんねるのトップページには「賠償金滞納処分差押物件」の文字が…
同9月に開示を命じる仮処分が出たが、ひろゆきさんは何の対応もしなかったため、間接強制で1日5万円ずつの仮制裁金を科すこととなり、債権は500万円に膨れあがった。それで今回の全財産差し押さえ申し立てになったわけだが、夕刊フジは、
「(差し押さえ)対象となるのは西村氏の銀行口座、軽自動車、パソコン、さらにネット上の住所にあたる2chのドメイン『2ch.net』にまで及ぶ見込み」
としている。
「2ちゃんねる」にはこの報道以降120を越えるスレッドが立った。カキコミは
「今回ばかりはもうだめだろ さようならおまえら、楽しかったよ 元気でな 」
「2ちゃんが閉鎖している間、おまいらはどこに集合するの??決めておこうよ!!」
「ニート達ってどうするの?」
など停止するものと思い込んだものが多い。また、「2ch.netドメインが差し押さえられたときに2ちゃんねるにアクセスする 方法を紹介します」といった対策を呼びかけるサイトも登場した。「差し押さえ請求した会社員はどんなヤツなのか」という非難、追及のカキコミも目に付く。
ドメイン(インターネット上の住所)が差し押さえられれば、「2ちゃんねる」が停止してしまうのは考えられることだが、果たしてドメインが、ひろゆきさんの「財産」として差し押さえの対象になるのか。数人の弁護士に話を聞いたが、どの弁護士も首を傾げた。
数多くの「2ちゃんねる」訴訟を手掛けた久保健一郎弁護士は、
「ドメインを差し押さえた事例など聞いたことがない。まぁ、著作権とか特許と同様な形で『手続き上』はできないこともないが、ただ、財産として換価(値段を見積もること)ができるものかどうか…」
と話す。
「2ちゃんねる」の登録者 「ひろゆき」ではない
IT関係に詳しい壇俊光弁護士は、
「債権としてドメインを押さえてやりたい!という気持ちはわかる。100%無理とは言えないが、今回はあまりにも多くのハードルがある」
とJ-CASTニュースの取材に答えた。まず、「2ちゃんねる」のドメインの登録者はひろゆきさん個人ではなく、Monster Incという会社であること。第三者名義の財産に対する執行というのは非常に難しい。さらに2ちゃんねるのドメインを管理をしているのが、VeriSignというアメリカにある会社で、外国法人に対する執行手続きがたやすくないという点だ。
「夕刊フジを読んだときに、これはギャグかと。そんなんできるやったら、とっくに誰かがやっとる。まぁ、差し押さえられるならやってほしいですよ。それで私は、新しい論文を1本書けることになるわけですから(笑い)」