キーボードを備え、インターネット閲覧や文書作成などパソコン(PC)並みの機能を備えた新しいタイプの携帯電話端末が通信各社から相次いで発売されている。電話が付いた小型PCとも言える端末で、「スマートフォン」と呼ばれる。欧米に比べ日本では普及が遅れていたが、外出先でPC同様の事務作業をしたいビジネスマンや、インターネットのブログやミクシィなどSNS(ソーシャルネットワークサービス)を出先でも楽しみたいという個人の間で人気を呼び始めている。
ウィルコムが先導
NTTドコモが売り出したHTC社製のスマートフォン
国内でスマートフォンが広がるきっかけになったのが、2005年12月にウィルコムが発売したPHS端末「W-ZERO3」。シャープ製で、スライド式キーボードと米マイクロソフト社の基本ソフト(OS)「ウィンドウズ」携帯電話版を搭載している。これまでの販売台数は、2006年7月発売の後継機(実勢価格2万5,000円前後)と合わせて約50万台にのぼったとみられる。加入者数430万人の同社では空前のヒットを記録だ。
一方、NTTドコモが最初にスマートフォンを売り出したのは05年7月だった。これはモトローラ製だったが、06年7月には台湾HTC製を法人向け限定で、さらに同じものを06年10月にネットで個人向けに発売した。ソフトバンクモバイルも06年10月に、やはり台湾HTC製のスマートフォンを発売した。HTC製の実勢価格は7万円前後とかなり高いが、販売は順調という。
人気の秘密は、PC用の文書作成ソフトや表計算ソフトを使った文書ファイルが閲覧できるほか、メールで添付ファイルも送受信できるなど、PC並みの使い方ができる点だ。キーボードを備えていてもポケットに収まるコンパクトなサイズに仕上げた使い勝手のよさと相まって、ユーザーに高く評価されているようだ。
個人情報保護法も追い風に
国内でスマートフォンの普及が遅れたのは、ドコモのiモードなど通信会社独自のネットサービスが先行普及し、メールや情報サイトの閲覧ができたためだ。ただし、これらは閲覧可能なサイトが限られ、添付ファイルも読めないなど、ビジネス利用には不向きな点が多かった。
個人情報保護法の施行で、紛失による顧客情報流出の恐れから業務用PCの持ち出しを禁止する企業が増えたのも、スマートフォンの普及を促す背景になった。発売された各機種は、紛失した場合に利用者自身がネット経由で端末内の情報を消去できるなどの漏えい防止機能を備えている。
国内の携帯電話契約回線はすでに9,400万件を超えて、個人加入者の増加は頭打ちの傾向がはっきりしてきた。通信各社はスマートフォンで法人を中心に新たな市場開拓をもくろんでいる。