Web2.0にマッチした 企業のSNS活用法
-野村総合研究所 山崎秀夫氏インタビューVol.3-

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   企業が一般のユーザーなどに対し、自社製品や映像を提供し、自由にCMを制作してもらう「オープンソースマーケティング」。企業がブロガーに商品紹介の記事を書いてもらって、読者・消費者に「広告」と分からないように商品を宣伝する「ステルスマーケティング」。企業もこうした形でWeb2.0を使うようになってきた。ただ、活用に当たっては企業からの警戒感もある。企業は、どのようにWeb2.0的なマーケティングを展開していけばいいのか。前回に引き続き、野村総合研究所の山崎秀夫さんに、J-CASTニュースが聞いた。

――これから企業がSNSを活用するとき、どこに注目したらいいのでしょう。

My Spaceはついに日本語版が登場。アメリカではすでに多くの企業が利用している
My Spaceはついに日本語版が登場。アメリカではすでに多くの企業が利用している
山崎 私は、富裕層のちょっと下のところがポイントになってくると思います。一流企業の社員クラスの収入の人をターゲットにして、社交クラブみたいにイベントを開いて、そこで商品サービスマーケティングを行う、といったことに乗り出す企業が出てくるでしょうね。大きな市場になると思います。

――ただ企業は自社SNSの設立になかなか踏み切れない。なんで踏み切れないかというと、トラブルが起きたときにどうするかということが大きいと思います。大企業は興味があるが、マイナスの方が大きいのではないかと心配して手を出せない。その辺はどのように考えますか。

山崎 消費者作成型のCM、つまり「オープンソースマーケティング」っていうのは、確かにそういったリスクがあるんですよね。広い意味で「オープンソースマーケティング」に属すると考えられるブログにしても、SNSにしても(議案が)役員会に出た場合、「2ちゃんねる化したらどうするんだ」という話になる(笑)。一部の会社しかやっていないというのが実情です。そこで典型的に成功したのはミクシィです。

――なぜミクシィのケースがうまく行ったのでしょうか。

山崎 あのシナリオはどうなっているのかといいますと、自社でブログ・SNSつまりブランドコミュニティを作るとき、顧客が自社ブランドを唱和して広めてくれる限りは良いのですが、逆にブランドが傷つくことになったらどうするのかといったリスクがあります。それに対し、「百貨店のフロア」を借りるという風にすれば、何かがあると百貨店が悪いということになる、そうすると社内が収まるというシナリオになっている。それでミクシィが儲けた。アメリカでは、トヨタ、ホンダといった日本の大手自動車の大企業の一部は、My Spaceの上にコミュニティをすでに作っています。

――一方で「ステルスマーケティング」といわれる、口コミマーケティングが話題になりました。企業から報酬をもらってブログを書く人が、なかには物凄い批判を浴びたりしています。それをどのように考えていますか。

山崎 ステルスマーケティングは、米国ではすでに問題になっています。米国マーケティング協会が、広告であることを明言するように基準を定めているんですよ。また、消費者に悟られないようにモノを売りつける方法は、法律的には問題ないが、倫理観では懸念があるという指摘をしています。日本の企業では、その辺に鈍いところが多いですね。だから「ヤラセ」になっちゃうんですよ。もちろん「ヤラセ」になると反発が強いのは当然です。Web2.0を支える大衆表現をマーケティングに活用する場合には、誠実性・倫理観こそが重要で、多くの企業は「信頼関係」が大事だということを認識する必要があるでしょうね。

【山崎秀夫(やまざきひでお)プロフィール】
野村総合研究所社会ITマネジメントコンサルテイング部上席研究員。1986年野村総合研究所入社。ナレッジマネジメント、ネットコミュニティ論、ソーシャルネットワーキング研究などが専門。著書に「ソーシャル・ネットワーク・マーケティング 21世紀型―『コミュニティ・マーケティング』と『顧客クラブ』」(ソフトバンク出版)「SNSマーケティング入門 上客を育てる23の方法」(インプレスR&D)など

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