塾と競争しても生き残れる公教育のあり方を検討すべき
教育方法学が専門の藤川大祐・千葉大学教育学部助教授は、会議メンバー17人のうち、教育現場の経験者は2人しかいないことから、
「教育再生会議は素人が思いつきを言い合っているだけ。『塾禁止』なんて、その典型でしょう」
とバッサリ。その上で、
「教育再生会議では、塾と競争しても生き残れる公教育のあり方を検討すべき。ディベート教育、メディアリテラシー教育、キャリア教育等、公教育が取り組むべき課題は多く、すでに実践的な研究は多くなされている。実践者や教育研究者といった教育の専門家をもっと議論に参加させ、具体的なレベルで公教育の再生を論じてほしい」
と、教育の専門家を議論に参加させ、現場での研究成果を活用するように訴えている。
矛先を向けられる形になった塾業界の反応は、どうなのだろうか。
大手学習塾「栄光ゼミナール」はJ-CASTニュースの取材に対してA4用紙2枚にわたってFAXでコメントを寄せた。その中で、「今回の指摘は、教育の今日的状況や学習塾のはたしている実際の役割について、十分ではない情報と知識で仰っているのではないか」と、藤川助教授と同様の懸念を示した上で、
「サッカーを上手くなりたい子どもたちのためは、サッカースクールなどの場が多く設けられている。勉強(の場である塾)だけを仲間外れにするのはおかしい」
「理科実験や算数工作などの指導も組み込んで、知識偏重にならないように配慮している」
「学習塾は公教育と並んで、日本の教育の両輪をなしていると考えており、その責任を重く受け止めている。『学校対学習塾』という時代を見失った認識では、日本の学力再生も、教育再生も遠ざかってしまう」
「我が国の教育を学習塾抜きにして語ることは、教育の可能性を狭くしてしまう可能性すらある」
などと、強く反論している。
一方、学習塾の全国業界団体である「全国学習塾協会」では、「役員は全国にちらばっているので、早急に公式見解をまとめないといけない、ということで調整しているところです」と話している。
ただ、教育再生会議がまとめた第1次報告の原案には「塾の禁止」が盛り込まれていないあたり、「塾禁止論」が、今のところ支持を得ていないことを示しているようだ。