もうすぐ新年。初詣に出かけ祈願をするのは日本らしい風物詩でもあるが、実際に足を運ばなくても「ネット参拝」が可能な神社仏閣のホームページが増えている。ところが、全国約8万か所の神社を包括する神社本庁が、全国の神社に対し「信仰の根幹に関わる問題だから、もう一度考えていただきたい」と注意を喚起、ちょっとした論議になっている。
J-CASTニュースが神社本庁に取材すると、
「ネット参拝ができる神社は、全国で1,000を下りません。もちろんインターネットを使ってPRや情報発信をすることは奨励していますが、参拝の原則は実際に拝観すること。それをネットだけで完結させるのは…。また、通信販売で、お土産のようにお守りやお札まで販売しているHPも見受けられるんですから」
と戸惑っているのだ。
「お賽銭」のアイコンをクリックする
愛宕神社の「バーチャル参拝コース」にはお賽銭箱もある
では、「ネット参拝」とはどんなものなのか。たまたま見つけた東京都港区にある愛宕神社の「バーチャル参拝」を試してみた。
まず、大鳥居の写真が出てきて、ここを通ることから「参拝」が始まる。「出世の石段」を登り、「一の鳥居」をくぐり、「手水舎」で手を口を清め、社殿への参道を歩く。いわゆるここまでは参拝のマニュアルのようなもので、参拝までの作法や、設置物の由来などの説明がされている。そして賽銭箱にたどり着く。「お賽銭」のアイコンをクリックすることが求められ、
「あなたのIDが神社に届きます。あなたのご参拝の証しになります(お金はかかりません。ご安心を)IDを送っていただいた方のお幸せを御祈念いたします」
そして、
「では、ここでご参拝なさってください。正しい参拝の仕方は『二礼二拍手一礼』です。二度おじぎをして、二回柏手を打ち、そして最後にもう一度おじぎをします。あ、やらないで次に行こうとしているでしょう。ちゃんと御参拝ください(回りに人がいる場合は心の中で)」
という説明が書いてある。
これで参拝は終了。このまま帰っても、さらに、ネットのお宮の中に入るのも自由だ。
愛宕神社はJ-CASTニュースに対して、
「始めたのは平成8(1996)年からです。バーチャル参拝を設けたことによって(話題になり)参拝客が増えました」
と話したが、神社本庁の通達や、様々な報道があったことで、これ以上のことはいえないのだという。愛宕神社だけでなく、「取材は受けられない」という神社が多かった。
「手紙やFAXがメールに代わっただけ」
そうしたなか、高知県南国市の新宮神社がJ-CASTニュースの取材に答えてくれた。同神社が「ネット参拝」を始めたのが10年ほど前。きっかけは「面白そうだった」からだという。
「昔から、入院などで参拝できないなどいろんな人がいまして、そんな人から祈願や罪けがれを浄化してほしいなど手紙やFAXが来て、それに応じたわけです。ネット参拝はその現代版なんです」
と、手紙やFAXがメールに代わっただけの話だと説明する。また、お守りやお札などのネット販売をしていたが、もうやめたのだという。「送料をどうするだとか、注文があった品が無くなっちゃうとか(笑い)色々煩雑だったので。ネット参拝も無料でやっていますから、忙しいだけで、大変なんですよ」 と苦労話になった。
それでは、ネット参拝をしていない神社はどんな考えなのか。東京都の神田明神は、
「お参りなので、ご本人が足を運ばなくては意味がないんですよ」
と、ネット参拝は「邪道」と言わんばかりだった。
ネット上の意見はどうなのか。ブログを検索してみると「遠方だからとか、面倒だからという理由で、その場所に行かないで御利益だけ得ようとするというのは、あまりにも信念が腐ってはいないだろうか」といった批判的意見があった。
一方、2ちゃんねるではこうだ。
「おまいら、八百万の神を舐めるな。ネットにだって神様はいるんだぞ!」「800万もいるんだから、とっくにネット上に引越しした神もいるって」「結局大事なのは祈る気持ちだろ?」「サーバーを御神体にして分霊すればいい」
こちらは、ネット参拝でも意味があるというカキコミも多かった。