「少しでも安く見せたい」 携帯料金の消費者無視

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   携帯電話の広告をめぐって、公正取引委員会は12月12日、ソフトバンクモバイルを景品表示法違反(有利誤認)のおそれで「警告」した。同社は既に広告を改めており、最も重い「排除命令」はないと予想されていた。ただ、KDDI(au)とNTTドコモにも「同法違反につながるおそれがあった」と公取委が「注意」し、けんか両成敗の決着になった。過剰な広告展開の背景にある、「複雑な料金プランを少しでも安く見せたい」という消費者軽視の業界エゴが浮か上がるが、抜本的な改善には各社とも及び腰で、広告のルールづくりですら主導権争いが起こっている。

メリットだけ強調し、デメリットは小さく書く

複雑な料金プランのメリットだけが強調される
複雑な料金プランのメリットだけが強調される

   番号継続制のスタート時にソフトバンクが仕掛けた広告を契機に公取委は「携帯電話の料金体系は非常に複雑で国民の苦情も多い。よりわかりやすい表示で情報提供すべきだ」と、業界全体で料金プランの表示を改めるよう求めた。
   公取委が問題視したのは、ソフトバンクモバイルの10月26日の新聞広告と、同日から11月2日まで放送されたテレビコマーシャルだ。消費者の関心が高まった番号継続制の導入にあわせて「通話料、メール代0円」と宣伝したが、無料になる条件の文字は小さく、「あたかもすべての場合で通話料とメールが無料になるかのような表示で、市場にあたえた影響は大きかった」と指摘した。

   一方で公取委は、KDDIとドコモについても、番号継続制導入前の広告をわざわざ持ち出した。KDDIは06年2月から7月まで展開した「MY割」や「無期限くりこし」で条件表示が明瞭でなかったとし、ドコモについては、05年12月から今年9月まで行った「ファミ割ワイド」や「2カ月くりこし」の広告を問題視した。

   公取委は今回の問題の背景について「競争が活発となり、顧客にあった料金体系をつくった結果、料金は複雑になった。複雑さの中でメリットだけ強調し、デメリットは小さく書くのは各社共通しており、表示が乱れている」と分析する。携帯各社は(1)発信が多い人の月額基本料は高いが、通話料は安く(2)受信が多い人の月額基本料は安いが、通話料は高くする――という利用形態別料金プランを導入して割安感を演出した。その後、料金はさまざまな割引制度の追加で複雑化していく。

携帯各社は広告表示の自主ルールを見直し

   日本広告審査機構(JARO)に06年4~9月に寄せられた広告の苦情251件のうち通信は20件あり、うち携帯電話は6件を占め、公取委が指摘した「MY割」などが含まれていた。

   携帯各社は今後、番号継続性に不参加のPHSのウィルコムも公取委から注意されたことを踏まえて、広告表示の自主ルールの見直しに入る。電気通信事業者協会を通じて、消費者の誤解を招かない広告や宣伝の基準を考える。公取委は、広告ルールを景品表示法に基づいて認定する「公正競争規約」とするよう業界団体に要望しており、ソフトバンクモバイルが前向きとされる。

   その一方、通信業界を所管する総務省は、04年3月に同省主導で作成した広告表示のガイドラインの見直しを検討するよう行政指導した。ガイドラインは携帯電話だけでなくADSLなど他の通信サービスも細かく規定しており、「あれで書き尽くしている。携帯だけ別に作ることはない」「ソフトバンクの土俵には乗りたくない」との声も業界内にある。霞が関の主導権争いと業界内の思惑がからみ、調整が進むかはどうかは全く不透明だ。

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