財政の健全性を示す実質公債比率が18%を超え、地方債の発行には国の許可が必要となる指定団体入りした鹿児島県・奄美市が、「このまま放っておくと大変なことになる――すでにレッドゾーンに入っている」と題した市の財政資料をホームページに公開した。財政が悪化する自治体が相次ぐなか、危機を訴えるケースはあるが、自己批判的な文言が並び、自虐的ともとれる資料を公表するのは異例中の異例だ。
奄美市は2006年11月、市財政課が作成した「このまま放っておくと大変なことになる」と題された資料をHPに公開した。その内容は、本当にお先真っ暗な奄美市の財政状況が辛らつな評価コメントとともに描かれている。
資料では、同市が06年度当初予算で約14億7,700万円の実質的財源不足にあることなどを数字入りで詳細に説明して、財政についての危機感を訴えるかたちになっている。
「09年7月の皆既日食は本当に真っ暗で迎える」
奄美市が公表した「このまま放っておくと大変なことになる」財政状況
奄美市は、名瀬市、笠利町、住用村が2006年3月に合併して発足した自治体だが、資料では合併後の財政状況を検証している。
「合併によってサービスの向上を図りたいとする気持ちが、事業費(投資的経費)の拡大につながり、起債増、公債費増、起債制限比率上昇への悪循環をきたす」
など、お役所の言葉とは思えない自己批判的な文言が並ぶ。
また、合併の恩典については合併特例交付金、市町村合併補助金などと06年度予算を照らし合わせ、
「合併に要する支出分が支援されるだけであり、留保できる余裕財源にはならない」
とバッサリ。さらには、市が合併特例債を利用して積み立て、運用益で地域活性化事業を行う基金18億5,000万円については、奄美市が皆既日食が観測できる区域に入ることを念頭に、
「このまま放っておくと、合併特例基金は、全部財源補填に使われるおそれがある。2009年7月22日の皆既日食は本当に真っ暗になってしまう」
と辛らつな評価を下している。
もともと市職員向けに作成した資料だった
それにしてもこれほど「お先真っ暗な」財政状況を市側が積極的にPRするのもなんだかおかしな話だ。実は、この資料、最初は奄美市財政課長が市職員向けに作成した資料だったのである。
市財政課はJ-CASTニュースの取材に対し、
「合併後に(市の財政状況を)認識してもらいたいということで作成しました。こう言ってはなんですが、(合併で)入り混じることになりましたから、お互いに奄美市に対しての意識を統一化しようということです」
と答えた。
その後、「市民に資料を開示したほうがいいのでは」という職員の声と市長の意向を受けて、06年8月末から市が開いていた「出前講座」と呼ばれるフォーラムで一部の市民に発表した。そうすると今度は、「他の市民にも知ってもらいたい」という要望が寄せられ、HPでの公開に踏み切った、というわけだ。
でも、「お先真っ暗」な財政状況では、市民は不安になってしまうのでは。J-CASTニュースがたずねると、次のように答えた。
「あくまで『なにもしなければ』という前提での話です。市民の方にも『何もしなければ』という点は理解していただいたと思いますよ」