TVゲーム最大のヒットシリーズ9作目「ドラゴンクエスト9 星空の守り人」が、ソニー・コンピュータエンタテインメント(SCE)の「PS3」陣営を離脱、任天堂の携帯型ゲーム機「ニンテンドーDS」専用として07年に発売されることになった。「これを機に、ゲームメーカーは雪崩をうって任天堂陣営に移る」と指摘する専門家もいて、業界地殻変動の起爆剤になりそうだ。
ドラクエは、任天堂の「ファミコン」で産声を上げ「6」作まで任天堂陣営だったが、SCEに請われ、「7」からSCEに移った。そんなドラクエが今回、SCE陣営から離脱することになったのには様々な要因があるが、実は、ドラクエに限らず「PS2」にソフトを供給してきたメーカーはSCE陣営からの離脱をかなり前から模索していた。
シンプルで親しみやすいゲームが売れている
DSでの「ドラクエ9」発売で『大政奉還』が近い??
「(PS2へのソフト供給を)やめられるものならやめたい。でもやめられない」。大手ゲームメーカーの幹部は2年前、こんな悩みを打ち明けた。「PS2」へ供給するゲームの開発費が膨大になり、しかもゲームが売れない時代に入っていたからだ。
「PS」時代の開発費を1とすれば「PS2」は5倍から10倍。さらに「PS3」になると「PS2」の2倍から3倍以上とされる。ユーザーは「PS3」を買う以上、ゲームの進化を期待するわけだから、「いったい誰が作るんだ!?」という悲鳴がソフトメーカーから出ていた。
そうした中で出てきたのが「DS」である。既に国内で1,200万台を売り上げ、06年内には1500万台になろうとしている。ミリオンヒットになるソフトも続出しているが、それも映像に凝ったものではなく、シンプルで親しみやすいものが売れている。開発費は相当抑えられ、その分、今まで無かった新しいゲーム作りにチャレンジできるのだ。実は、「PS3」用のソフト開発を表明しながら、方針変更し、直前に告知を「消した」メーカーがかなりあると言われる。
エニックスと合併した「スクウェア」も、「ファイナルファンタジー」などのメガヒットシリーズを持つ業界トップのソフトメーカーだったが、「PS2」で映像のリアルさを追及するあまり、開発費がかさみ経営が行き詰った。それで、スクウェア・エニックスになったわけだが、和田洋一社長は2006年12月12日の記者会見で、「(DS移行で)ドラクエ9は前作(PS2用)よりも開発費を抑えられそうだ」と語った。新作が出るたびに開発費が膨らむ事にストップをかけ、利益向上を目指す考えなのだ。
PS3用にソフト1本作る費用でDSに10本作れる
ゲーム業界関係者はJ-CASTニュースに対し、
「PS3用にソフト1本作る費用でDSに10本作れるという声もあります。今までが高リスク・低リターンの状況でしたが、それと比べ低リスク・高リターンが期待できるDSにソフトメーカーが流れていくのは自然な事だと思います」 と話した。
一方、スクウェア・エニックス広報は、「ドラクエはもともと、一番売れているハードに供給し、多くの方に遊んでもらうという考え方です」と話した。任天堂広報は「ゲーム人口を拡大して行きたいという当社の考え方に共感していただいた結果だと考えています」。一方のSCE広報は、「ドラクエについて特段コメントできることはありません」とだけ答えた。
ドラクエは「PS」用ソフト「ドラクエ7」が約420万本売れるなど、これまでSCEに貢献、支えてきたソフトなのだが、ドラクエだけでなくソフトメーカーの多くが、SCEに見切りを付け始めたとの情報もある。ゲームに詳しいジャーナリストはこう話す。
「SCEは、PS2もPS3も『ゲーム機ではありません』みたいなことを言ってる。ソフトメーカーは一生懸命にSCEに協力し支えてきたわけです。しかし、DVDやブルーレイの販売ツールのマシンのようにしてしまった。ゲームファンを減らすようなもんで、これじゃぁ、前の任天堂の方がまだいいと。『大政奉還』が近いんじゃないですか」