画家である四男への公費支出をめぐって、石原慎太郎東京都知事が集中砲火を浴びている。四男を「余人をもってかえがたい」ほどの人材だ、と恥じらいもなく断言。しかし、世間的には目ぼしい業績はなく、まったくの無名。もう「親バカ」もいい加減にしろ!そんな声が聞こえてきそうだ。そして、今度は三男をめぐる新たな「疑惑」が浮上している。
問題となっているのは、石原都知事の四男延啓氏が、都の芸術振興事業に関連して、外部委員に委嘱され、公費でヨーロッパに出張していたことだ。石原知事が始めた若手芸術家を支援する事業「トーキョーワンダーサイト」の企画した「能オペラ」の調査を目的とした海外出張に、延啓氏は「アドバイザリーボード委員」として参加。委員を委嘱されたのは03年3月1日から1ヶ月だけだが、旅費55万円は都が負担したという。さらに、04年1月にも四男は和太鼓奏者の舞台背景の「鏡板」を描くために渡欧。こちらの、約120万と言われる費用は都が演奏者に払った公費からまかなわれたのだという。
「おかしいね、ちょっとあなた方の感覚ってのは」だって
石原知事は都の定例記者会見でも恥じらいもなく「余人をもってかえがたい」と発言
この「トーキョーワンダーサイト」をめぐって、石原都知事の「親バカっぷり」が知事定例記者会見で露見した。
06年11月24日の記者会見では、「息子に能力はあったとしても、それをあえて使わないというのが知事のいつもの姿勢では」との記者の質問に、
「そうじゃない。余人をもってかえがたかったら、どんな人間でも使いますよ、私は」
と発言。つまり、四男が「余人をもってかえがたい」人物だったとの見解を示した。
さらに、06年12月1日記者会見での「四男の知り合いが参与になって、その参与が四男を委員として推すのはおかしくないか」との記者の質問には、
「どうしておかしいのよ。私は、肉親だろうと、なかろうと、可能性のある人間に物事をリファーする(任せる)のは当たり前じゃないですか(中略)あなた方、ちょっとおかしいんじゃないの、それ。私はね、自分の子供だろうと、誰だろうと、外国人だろうと、才能のあるというか、それはもう今村君(参与)に任してる。私が決めたんじゃないんですよ。誰だっていいから、役に立つ人間で、しかも民間の人をボランティアで使ったらいいじゃないですか。おかしいね、ちょっとあなた方の感覚ってのは」
と答え、あくまでも四男が「余人をもってかえがたい」からこそ、「トーキョーワンダーサイト」の委員に推挙されたと主張した。では、四男延啓氏は本当に「余人をもってかえがたい」のかというと、ちょっと、いや大変疑問である。
目ぼしい業績を見つけたネットユーザーは誰一人いなかった
11月28日付日刊ゲンダイは、「美術業界関係者」の話として、次の言葉を引用している。
「延啓氏が手がけているのは現代美術で、市場ではほとんど流通せず、買い手は官公庁とか企業しかいない。それもコネで探すしかありません。一般的な知名度が低いのは当然でしょうが、延啓氏は業界的にも“無名”です」
さらに、ネット上Q&Aサイト「Yahoo!知恵袋」では、11月25日から「石原都知事の四男は有名な芸術家なのですか?」などの質問が書き込まれたが、ネットユーザーの検索には四男の「業績」もあまり引っ掛からなかったようだ。
「個展を開いただけで受賞歴などは全然無し、仕事は東京都関係のみですから、『画家』と言うより『コネ』としか思えません」
目ぼしい業績を見つけたものは誰一人いなかった。
それでも、都知事はその後も「ウチの息子は立派な絵描きですよ」「息子でありながら立派な芸術家」と幾度となく述べており、06年12月7日の都議会で、知事は「適正な手続きを経て旅費の費用弁償を受けたもので、違法性も問題もない」と発言している。しかし、石原都知事の「親バカぶり」はもう誰にも明らかなようで、06年12月9日付け朝日新聞社説でも、「親心が過ぎませんか」と題し、次のように批判されている。
「いくら親心が深くても、『違法性があるなら指摘してもらいたい』とまで言うのは、開き直りに聞こえる。法律に反しなければ何をやってもいい。まさか、そんなことを考えているわけではないだろうが、知事の品格が疑われる」
さらに、四男の件に加えて、今度は三男をめぐってあらたな疑惑が浮上している。
06年12月8日付け日刊ゲンダイは、
「昨年秋の総選挙で三男の宏高氏(42)が当選した直後、福島県知事汚職で登場した水谷建設の元会長(61)と親子で祝宴を開き、500万円を手渡されたのではないかという。三男の資金管理団体などの政治資金収支報告書には記載されていないが、紙袋が料亭に運ばれたのは間違いないとの証言もある。(中略)疑惑の祝宴は石原ファミリーを直撃することになるのか」
と報じている。さらに、「週刊朝日」06年12月22日号は、会合に出席した「キーマン」の500万円を含めた現金2千万円が焼酎の箱に入れられ、石原都知事に渡されたほか、知事の政治資金収支報告書にその記載がないとする証言を掲載している。ほかにも週刊誌に似たような報道もある。
この件について、石原都知事は記者団に対して「知りませんね。私は関係ないよ」と発言しているが、疑惑が仮に本当なら、「親バカ」ではすまされない。