生命保険大手の2006年度上半期業績報告(決算)が出そろった。売上げを示す保険料等収入と収益力を示す基礎利益が共に減収減益だった朝日生命保険の苦戦が目立っている。特に、生保危機が叫ばれた01年度に業界6位だった保険料等収入が、この上半期は前年同期比5.6%減の2,938億円にとどまり、国内系と外資系の計13グループの中で12位まで後退。同2.7%増の2,902億円に伸ばしたソニー生命保険の射程にとらえられた。「振り向けばソニー生命」を脱出するのは容易ではない。
苦戦の主な原因は医療・介護保険などの出遅れ
朝日生命、振り向けばソニー生命?
朝日生命の苦戦の主な原因は、05年まで好調だった医療・介護保険などの「第3分野」が伸び悩んだうえ、各社が売上げを伸ばしている銀行窓販の出遅れがある。
第3分野の新規契約の年換算保険料(新契約から1年間に入る保険料収入)は、大手13グループのうち、三井生命保険を除く12グループが前年同期を下回った。国内勢では富国生命保険が同12.7%減、外資系はAIGグループ内のアリコジャパンが同22.3%減と大幅に落ち込んだ。一方、朝日生命は同0.5%減で、朝日生命幹部は決算発表会見で「横ばい」を強調した。
だが、朝日生命にとって第3分野の伸び悩みは死活問題だ。朝日生命は生保危機の折、解約が相次ぎ、保険金の積み上げである保有契約高が減少に転じてから、規模の追求をあきらめ、第3分野に活路を求めた。当時は、国内勢にとって、まだ未開拓の分野だったため、他の大手生保は冷ややかだった。しかし、人口減と生前給付を求める需要の高まりをとらえ、朝日生命の経営再建の柱に成長してきた。その矢先の失速だけに、軽視できない事態だ。各社とも、伸び悩みの理由として「新商品の発売サイクル」を挙げる程度で、根本原因を突き止められていないのも深刻だ。
また、朝日生命は個人年金保険などの銀行窓販に参入していないため、第3分野の伸び悩みを補えなかったことも大きい。銀行窓販は銀行向けの手数料競争や商品開発がますます激しさを増している。朝日生命は「非常に有望な市場」としながら、「参入の是非は決めていない」とするなど、出遅れ感は否めない。
「3利源」を公表した大手の中で唯一、逆ざやが増える
一方、利益の内訳を示す「3利源」を公表した大手の中で唯一、逆ざやが増えたことも深刻だ。他の生保は日銀のゼロ金利政策の解除に伴う金利上昇の恩恵で逆ざやが減少しており、最終的に基礎利益が増えた。高金利を前提にしたバブル期の契約で抱えた「逆ざや」が解消しつつあるためだが、朝日生命は利回りの高い外債建ての運用をやめ、日本の国債を中心に扱った結果、かえって逆ざやが増え、大幅な減益につながった。
これに対し、ソニー生命は、男性社員が徹底的に顧客の相談に応じるコンサルティング販売で、保険料等収入を着実に伸ばしている。既存契約の解約や保険料の支払いをやめる解約失効率も低水準を維持。このままのペースでいけば、保険料等収入で朝日生命を06年度末に逆転する可能性もあり、朝日生命は尻に火がついた格好だ。