携帯電話などKDDIとソフトバンクグループの電話サービスを利用しているユーザーは、2007年1月から「ユニバーサルサービス料」という見慣れない料金を払うことになる。NTT東日本と西日本が提供する全国の固定電話網を維持するため、両社の固定電話を使っていない人にも一律に月7円(税抜き)の負担が始まるからだ。ただ、この制度には異論、反論が多く、現行のまま維持していくのは困難とみた総務省は、12月にも研究会をスタートさせ、2010年度までに改める考えだ。
固定電話網維持のための「7円負担」が議論を巻き起こしている
電話の全国一律サービスを維持する仕組みは02年にできた。NTT東西は、固定電話の全国網と公衆電話、緊急通報サービス(110番、119番)の維持を法律で義務付けられている。地方の不採算地域の固定電話がなくなれば、生活に支障が出て問題が大きい。そこで、ユニバーサル基金をつくり、NTT東西の固定電話の赤字の一部を他の54の通信会社で穴埋めする。KDDIとソフトバンクは11月24日、この負担を利用者に転嫁すると発表した。
このままでは7円のユーザー負担額も膨らむ
通信料金に上乗せされる7円は、1つの電話番号あたりなので、携帯やPHS、IP電話も対象だ。例えば固定電話1契約と、父、母、娘で3台の携帯電話を契約している家族なら月28円で、年間では336円の負担になる。1家庭では少額だが、何回線も契約している企業から、「NTT東西の赤字をなぜ負担させられるのか」との素朴な疑問の声が出そうだ。NTTの固定電話は携帯電話の普及で利用が減っており、赤字幅は今後も拡大する。このままでは7円のユーザー負担額も膨らむ可能性が高い。
「ユニバーサル基金からの交付金は妥当」と11月21日に答申した総務省の情報通信審議会でも、消費者団体を中心にNTT東西にいっそうの経営効率化と、「都市部の基本料引き下げ」を求める声が出た。NTT東西の基本料は都市部が月額1,700円、地方は1,450円と差がある。コストの低い都市部の収入で高コストの地方を補てんする構造で、今回の基金発動でさらに都市部の負担が増すわけだ。さすがに、答申はNTT東西に基本料を含む電話の料金体系見直しを要請し、批判に配慮を示さざるを得なかった。
どこまで全国一律サービスにすべきか
しかし、NTT東西は、都市部は多くの通信業者が参入して競争が激しいことや、基本料金を合理化努力で引き下げれば、地方を補てんする原資が減ることなどを理由に「基本料値下げによる格差是正は困難だ」との見解。今後の対応は明らかにしていない。
これまで難なく維持できた全国一律の固定電話サービスを、今後どうやって維持していくのか。制度の見直し論議で総務省幹部は、「固定電話をいつまでユニバーサルサービスと位置づけるのか。携帯電話の普及状況などいろいろ考えなくてはいけない」と語る。ある大手通信会社首脳も「携帯やブロードバンドなど多様な通信サービスがある中で、どこまでを全国一律サービスにすべきかの議論が必要だ」と指摘している。
たった7円でも、大きな問題をはらむユニバーサルサービス料。負担の顕在化が論議を巻き起こした形だが、多くの人が納得する解を求める作業は難航しそうだ。