領収書がいらない「人脈づくり手当」が、海外で働く外務省職員に支給されている。財務省は「実費支給」に切り替えようとしているが、外交官からは不満の声が上がっている。民間ではこんなやり方は通らない。特権意識の強い外務省と、一般企業とでは、感覚が大きくずれている。
在外公館の国家公務員には「人脈づくり」を目的に、使途を問わずこれまで月額約10万円が支給されていたという。
「領収書を貰いにくい時もある」
「実費支給」切り替えに外交官からは不満の声
しかし、財務省が外務省に「人脈づくり手当」を「実費支給」へ切り替えるよう求めていることが明らかになった。財務省は、領収書を提出後、実費で支給することで透明性を高めたいとしている。民間企業なら当たり前の感覚だ。ちなみに、「人脈づくり手当」は年間35億円にのぼっているという。
しかし、この財務省からの要求に対し、外交官からは、不満の声が噴出している。
「われわれ外交官の仕事は、交渉を担当する国の言葉を理解し、一から人脈をつくり、彼らから情報を得ることです。そのためには、積極的にパーティーなど人の集まる場所に顔を出し、土日も自宅を解放して友人や知人を招かなくてはならない。これ全部自腹を切っていたら大赤字もいいところです。そうした場では、領収書を貰いにくい時もありますし、会っていた人を特定できない場合だってある」
外交官も含めてキャリア官僚の場合、給与は、3級1号からスタートする棒給表によって定められている。級は職階、号は基本給の位置を示す。これに残業代や通勤手当がプラスされていくのだが、海外赴任になると、人脈づくり手当も含めた「在勤棒」と呼ばれる在外基本手当、それに海外住居手当なども支給される。
30代の外交官、手当だけで月に60万円近い
ヨーロッパに赴任中の30代の外交官は、これらの手当だけで、ひと月に60万円近いので、月収は軽くその2倍になると明かした上で、こう話す。
「人脈づくり手当は、これまでは使途が問われなかったので、個人のポケットにまわっていた例もあると思います。そのせいだけではないのでしょうが、帰国したとたん、家を新築しているケースも周囲では見られます。真面目に仕事をしている外交官にとっては確かに厳しい変更かもしれませんが、現行では、警備や会計など、交際費が必要のない職員にも払われています。これは。明らかに無駄遣い以外のなにものでもないでしょう」
「人脈づくり」が目的だとすれば、「実費支給」でだめな理由はないように思われる。