国内の新車市場で軽自動車の年間販売台数が初めて200万台を超えようとしている。登録車の販売不振が続いているのに、軽自動車の販売は好調だ。ところが、前年実績を上回りながらも今一つ波に乗りきれていないのがマツダだ。軽自動車のすべてをスズキからOEM調達している弱みもあるが、車種構成が物足りない。OEM車で販売に勢いがある日産自動車とは対照的な状況にあり、販売車種削減の話も浮上してきた。
マツダの軽の販売台数は年間5万台程度で推移している。現在の販売車種は、乗用車がAZワゴン(ベース車=ワゴンR)、キャロル(同アルト)、スピアーノ(同ラパン)、AZオフロード(同ジムニー)の4車種、商用車がスクラム(同エブリイ)の1車種。今年の春まではラピュタ(同Kei)があったが、販売不振から廃止した。
少ないモデル数をさらに絞ることを検討
マツダが販売する軽自動車「キャロル」。すべての軽自動車はスズキからOEM調達している
販売車種の見直しそのものは珍しいことではないが、軽市場が拡大している最中に、マツダは少ないモデル数をさらに絞ることを検討しているようだ。
マツダにとって軽は、国内販売台数の20%を占める重要な商品。ただしマツダがクルマづくりのテーマとしている「Zoom-Zoom(ズーム・ズーム)」(ワクワクするような車つくり、といった意味)には、スズキ製である軽は当てはまらない。あくまでも国内販売店の商品補完のために、OEM調達という手段で軽の商品を揃えている。
同様にスズキと三菱から軽のOEM供給を受けている日産は、軽販売では後発ながら国内販売台数の15%を軽が占める状況にある。4~9月の上期実績では、日産が3車種で5万8,223台を販売したのに対し、マツダは5車種で2万6,233台の販売台数となった。
その差は販売店数の違いだけでなく、日産が軽の宣伝を活発に展開する一方で、マツダはZoom-Zoomではない軽の販売促進には力を入れたくないというお家事情もある。最近のマツダの軽販売戦略は、スズキがベース車をマイナーチェンジした際に、低価格グレードを強化するのみに止まっている。
販売店は売れる「軽」を切望
しかしマツダの販売店からすれば、市場拡大中の軽は売れるようにして欲しい。そこでマツダは、軽の車種をさらに絞り込み、販売を集中させることで1車種あたりの販売台数を増やし、軽全体の販売量を増大させることを考えはじめた。
だが軽の人気車種はトールワゴン(高い全高が特徴のタイプ)。現在のマツダにはAZワゴンしかない。下駄代わりに選ぶ低価格車はキャロルとスピアーノがあるが力不足。他社からは日産のモコが売れていることを例に、マツダの軽はベース車と変わり映えしないことが、売れない要因と指摘されている。
それでもかつてはボディをオリジナルデザインにしたキャロルをヒットさせたことがある。軽販売の建て直しにどこまで力を入れるのか、供給元のスズキの事情もあるが、軽市場の伸びが止まる前にマツダの軽が売れるようになることを販売店は切望している。