スズキが軽自動車頼みの収益構造から離脱する姿勢を鮮明にしている。2006年11月1日発表した06年9月中間連結決算は、国内で軽自動車の販売が伸び悩んだにも関わらず、売上高が前年同期比16.4%増の1兆4823億円と8年連続で過去最高を更新した。海外での小型車販売が好調だったのが大きい。
アジア市場で人気が高いスズキ車
欧州では小型車「スイフト」が好調
好業績を受けて07年3月期の連結売上高の見通しを従来予想より2,000億円多い3兆円に上方修正した。05年度から取り組み始めた5カ年の中期経営計画の「10年3月期までのできるだけ早い時期に売上高3兆円」との目標を、計画2年目で早くも達成する見通しだ。
国内専用サイズである軽自動車の市場は、ガソリン価格の高騰を背景に拡大を続けているが、ダイハツ工業ほかのライバルメーカーの攻勢も厳しく、スズキの軽の販売台数は10月実績で前年同月比8.6%減の4万4,355台と苦戦を強いられている。軽よりひとクラス大きい小型車でばん回しているが、それでも国内での四輪車全体の販売台数は、4~9月の累計で前年同期比0.4%減の32万8,000台と、ほぼ横ばいで推移している。
ただ海外では事情が異なる。乗用車需要が急拡大するインドなどアジア市場では小型・低燃費のスズキ車は人気が高い。欧州でも小型車「スイフト」が好調で、4~9月期の海外販売台数は前年同期比11.0%増の72万3,000台と、2ケタ増を達成。国内と合わせた世界販売台数は、同7.2%増の約105万台になった。これに円安効果も加わって、今中間連結決算での営業利益は同19.3%増の678億円、当期利益も同27.5%増の394億円といずれも過去最高だった。
「軽の販売台数首位」の座を明け渡す可能性
好調な輸出が貢献して、スズキの国内生産台数は59万3,000台と、4~9月の上半期実績で日産自動車を初めて抜いて国内3位となった。ただ一方で、苦戦気味の軽自動車は07年3月期での販売目標を63万台から60万5000台に引き下げた。シェアを競ってきたダイハツは、61万5000台を計画しており、スズキが33年間守ってきた「軽の販売台数首位」の座を明け渡す可能性が高くなっている。
11月1日の決算発表の会見で鈴木修会長は、軽のシェア争いについて「優先するのは収益で名誉は後回し。行儀の悪い振る舞いは厳に慎むべきだ」と述べ、軽自動車の販売シェア1位の座を守るため、販売台数を無理に増やす考えがないことを強調。国内では当面、欧州など海外向けの小型車生産を優先する考えを表明した。また、他メーカーに対する完成車のOEM(相手先ブランドによる受託生産)供給については、米ゼネラル・モーターズ傘下のオペルとも協議していることを明らかにし、現在2車種を供給している日産に絞って関係強化を目指す、という考えはないとの意向を表明した。