東京スター銀行と一部地方銀行がサークルKサンクスと提携して、ATM利用手数料を無料にしている「ゼロバンク」サービス。利用者には好評だが、三菱東京UFJ銀行(MUFG)などが「こちらの手数料負担を増す」とかみついて、「中止しないなら、ATM提携を解除する」と申し入れていた。回答期限の2006年10月31日が過ぎたが、東京スター銀行は11月6日のJ‐CASTニュースの取材に対して「ゼロバンクサービスはいまも継続しています」と答えた。
ゼロバンクをめぐっては06年7月、三菱東京UFJ銀行や八十二銀行(長野県)、七十七銀行(宮城県)、肥後銀行(熊本県)、第四銀行(新潟県)などが、「中止するか、銀行間手数料を見直せ。さもなくば提携解除」と東京スター銀行に迫った。
「ゼロ」では銀行間手数料が不均衡
MUFG、強攻策は当面見送る姿勢
理由は、「自行顧客がキャッシュカードでゼロバンクATMを利用すると、手数料負担が増して収益を圧迫する」というもの。MUFGはJ-CASTニュースに「東京地域では、銀行間のバランスが著しく不均衡になる」と説明した。
例えば、A銀行のキャッシュカードでB銀行のATMから現金を引き出した場合、B銀行には顧客が払う105円と、銀行間のインターバンク手数料としてA銀行からも105円が入る。ゼロバンクの場合、顧客の手数料は「ゼロ」だが、銀行間の手数料は発生する。
MUFGの顧客は東京スターの顧客より多く、MUFGのキャッシュカードをコンビニのサンクスや東京スターのATMで使うケースが、その逆のケースよりはるかに多い。銀行間の手数料はMUFG側の大きな持ち出しになるというわけだ。
消費者団体は「ゼロ」継続を要望
一方、この問題で消費者団体などからのMUFGなど反対派陣営への風当たりは強い。消費者団体の一部が全国銀行協会や全国地方銀行協会に対して「東京スター銀行に対するATM提携解除の申し入れを撤回してほしい」と要望したり、さらには金融庁や公正取引委員会に対しても、「ゼロバンク」の排除の動きが独占禁止法などに抵触していないかを調査するよう求めている。
「ゼロバンク」サービスは昨年3月に、大垣共立銀行とサークルKサンクスが提携して実施したのが最初。当時から「サービスを提供する銀行のいいとこどりで、本来の業務提携の趣旨に反する」との批判が、他の銀行にくすぶっていた。MUFGが東京スターに対して、ATM提携の解除という強い姿勢を示し、これに一部の地方銀行が追随したことで、一時は「ゼロバンク」側は劣勢に立たされたかのように見えた。
だが、11月6日時点で、MUFGはJ-CASTニュースに対して、「(東京スター銀行には)引き続き理解を求めていきたい」と語るにとどまり、ATM提携の解除という強攻策は当面見送る姿勢のようだ。
今のところは消費者団体などの動きが、MUFGなど反対派陣営の動きを封じ込んでいるといえる。