針や灸でツボを刺激して病気を治す鍼灸は根強い人気があるが、肝心のツボの位置に国によって違いがあった。世界保健機関(WHO)西太平洋地域事務局が2006年11月2日に茨城県つくば市で開かれていた国際会議で、ツボの位置を国際統一したことから一般の人もそれを知った。では、これまでは、「ツボを得ない鍼灸治療」があったことになるのだろうか。
ツボ治療は、東洋医学の一分野として中国に起源をもつ伝統的な療法。日本には6世紀初めに伝わったといわれる。明治時代以降の西洋医学の普及で、東洋医学は軽視されていた時代があった。
全361カ所のツボ、最後は多数決で
古い歴史を持つ鍼灸。これまでは、国によってツボの名称や位置に違いがあった
最近は鍼灸医学の研究が進み、その効果が証明されてきた。今ではWHOも神経痛や頭痛、リウマチ、胃腸炎、めまい、眼精疲労などの症状に鍼灸療法が有効であると認めている。
ツボの数は全部で361カ所だが、長い歴史の間に、国によって名称や位置に違いが生じていた。この問題にWHOが乗り出し、まず89年に名称の統一ができた。次は、肝心の位置だ。03年から日中韓が統一基準の策定に取り組んできた。この3カ国間では始めは計92カ所で食い違いをみせていていたが、このうち6カ所では合意できずにいた。
今回の国際会議では、これまでの3カ国にモンゴルやベトナムなど6カ国と2組織が参加し、難題の6カ所は投票で決着した。
国際統一ができたことで、日本国内で使われている鍼灸の教科書では、約40カ所を修正する必要が出てくるという。では、これまでツボの位置が微妙にずれていたことで治療には支障がなかったのか。