損害保険大手6社は2006年10月末、医療保険などの「第3分野」の保険商品で、01年7月~06年6月の5年間に4,365件、12億2,100万円の不払いがあったと公表した。損保業界は9月末に自動車保険などを巡る損害保険で31万件、総額186億円の不払いを公表したばかりで、契約者軽視の体質が改めて浮き彫りとなった。第3分野の不払いが6月に見つかった三井住友海上火災保険は第3分野商品の無期限販売停止処分を受けた。当然、他の大手5社も厳しい処分が避けられないはずが、「悪質でなければ厳しい処分は不要」との声が永田町から広まっている。トップの進退問題への波及を避けたい損保の「政界工作」がささやかれ、不払い問題は金融庁の公平な処分を巡る場外乱闘へと発展しかねない状況だ。
東京海上は与党の有力議員へ根回し?
金融庁の裁量行政復活、との声も
「アノ数字をどう思う?」
損保業界では東京海上日動火災保険の第3分野の不払い件数が大手で3番目に少ない805件だったことをいぶかる声が飛び交った。三井住友海上の第3分野での不払い発覚を受け、各社は調査を進めてきたが、当初は「業界でのシェア割に応じて、不払いがある」(大手損保)とみられていた。損保業界は、第3分野の支払い基準が生保より厳しい「損保基準」がまかり通るとされ、不払いが業界共通の問題と認識されていた。このため、業界最大手の東京海上は自動的に第3分野の不払い件数が多くなると思われていた。
ところが、東京海上は独自の基準を設けて、第3分野の不払いを調査した。各社が三井住友の先例を基準に調査したのと異なるため、「東京海上は1,000件単位で件数が減った」(別の大手損保)とさえ言われる。更に、「東京海上から、同じ基準で調査しようと打診された」(同)と証言する損保もあり、「損保協会の会長を務め、来年の勇退がささやかれる石原邦夫・東京海上社長を守ろうとしている」との声が根強い。東京海上は与党の有力議員への根回しも盛んに行い、「大事なのは件数じゃなく、悪質性。金融庁はそこを考えるべき」と半ば公然と発言する議員も出る始末だ。