510億「損失」でもソニー 経営陣の報酬カット考えず

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   国内外のパソコン(PC)メーカー向けに出荷したリチウムイオン電池で、複数の過熱・発火事故を起こしたソニーは、総数約960万個にのぼる電池の回収計画を正式に始動させた。これまで表に出てこなかった半導体・電子部品担当の中川裕副社長が2006年10月24日に初めて記者会見し、「PCユーザーや取引先のメーカー各社に迷惑、不便をかけお詫びします」と陳謝したが、「電池の回収・交換を円滑に進めて、顧客の信頼を回復することが第一の責務」として、中鉢良治社長以下、経営陣の報酬カットなどの社内処分を行う考えがないと強調するなど、釈然としないものに終わり、市場・ユーザーの信頼回復への道のりの遠さを印象付けた。

ソニーの供給能力に不安の声も

自社PC「バイオ」の電池も回収を発表
自社PC「バイオ」の電池も回収を発表

   ソニー製電池の不具合は、8月にデル(米国)が回収を発表して発覚した。過熱・発火事故の原因について中川副社長は、「微細な金属粉の混入が第一の要因」とは認めたものの、PC本体側のシステム構成にも問題があるとする従来の立場を踏襲。「PC側には全く問題ない」とするデルの説明とは食い違う、不透明感の残る説明に終始した。
   今回の会見がここまで遅れた理由については「電池回収を巡って、PCメーカーや米消費者製品安全委員会との協議に時間がかかった」と釈明した。また回収を機に、電池事業を縮小したり撤退する考えはないことを明らかにした。
   電池の回収個数が960万個と空前の規模に膨らむ一方、代替の電池は生産量を急に増やすことができないため、対象となるPCメーカー各社からは、ソニーの供給能力に対して不安の声も上がっている。中川副社長は会見で「ソニーも十分な供給能力を持っているわけではない。ソニー以外の電池メーカーの供給も受けながら回収・交換のスピードを上げたい」と話した。

合計では960万個の回収になった

   電池不足でPCメーカーの新製品の発売が影響を受ける可能性も指摘されている。しかし中川副社長は「他社の電池も使うので、年末商戦に向けたPC新商品の供給ができなくなることはない」と否定した。
   安全対策については、06年2月までに金属粉が発生しにくい製造法や、電池内部への混入を防ぐ工程を導入し、検査体制を強化したと説明。「現時点では十分な安全対策をやった」として、事実上の安全宣言を出した。一方で、ソニーのノート型PC「バイオ」での電池回収個数が、全世界で25万個に及ぶことも明らかにした。
   ソニー製電池の回収は、デルとソニーのほか、アップルコンピュータ(米国)、レノボ(中国)、東芝日立製作所富士通シャープゲートウェイ(米国)がそれぞれ実施する。ソニーは10月19日、自社での回収分を含む総数960万個の回収で、510億円の費用を負担することを発表している。

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