長野県で起きた女児誘拐事件では、容疑者と被害者の女児が出会ったきっかけはネット上の「サイト」だった。ネットでもこのことが「騒動」となっていた矢先、事件の舞台となった「メル友募集コーナー(広場)」が、ひっそりと閉鎖されていることがわかった。コーナーの「跡地」には、ネット上で友達を募ることについての意見を募集するコーナーが設けられている。「安全」確保の方策を探ろうというものだ。
2006年9月21日、長野県在住の女児(12)の身に起きた「誘拐事件」は、容疑者の男と4日間も一緒に過ごした後、9月25日になって女児が容疑者と一緒に神奈川県警小田原署に姿を現す、という形で決着を見た。だが、4日間の足取りをたどると、「誘拐」とはほど遠い様子が明らかになる。
容疑者と女児は「メル友広場」を通じて知り合う
「メル友広場」の「跡地」には、意見を募集するページへのリンクが設置された
容疑者と女児の2人は「ふみコミュニティ」と呼ばれるサイトの、メール友達(メル友)を募るコーナー「メル友広場」を通じて知り合った。容疑者は、女児が19日に書き込んだ「カレシ募集」という文言に反応、21日に小諸駅で待ち合わせ、ファミレスで食事をするなどした。同日中には東京都町田市にある容疑者の自宅に移動、22日・23日は神奈川県箱根町にある容疑者の親名義の別荘に行った、という。
24日夜、二人が別荘でテレビを見ていたら、女の子の公開捜査の報道が流れているのを見て驚いたのだという。ここから伝わってくるのは、「凶悪な犯人と監禁された少女」ではなく、単なる「ふたりのお友達」だ。
事件解決後、J-CASTニュースやスポーツ紙などが、この「メル友広場」について報じ、存在がクローズアップされることになったが、「メル友広場」の中でも、
「痛いところだなってことで全国に知れちゃうね(笑)」
「自分、絶対フミ(編注: サイト名)だって思った!!ふみも有名になったねww」
といった書き込みが相次いだ。
「もっと安全にメル友を探す方法を考える」
そんな中、事件解決から3日が経った10月28日午前3時、「メル友広場」のサービスが突然停止された。サービス停止の告知文には、
「休止している間、もっと安全にメル友を探す方法などをもう1度考えていきたいと思いますので、利用者のみなさまもぜひご協力ください」
と説明されたほか、意見を募るページへのリンクが設置された。このページには「『「未成年者が実際に会うことを前提にした友達募集』についてご意見募集」というタイトルが付けられ、意見を求めることになった経緯を説明している。それによると、雑誌など、ネット以外でも未成年者も対象にした友達募集の場が存在することを指摘し、「情報形態に関わらず、未成年者が見ず知らずの人と会うのは、少なからず危険を含んでしまう」という現状認識を明らかにしている。その上で、「サービス提供者の独断ではなく、一般の方のご意見が重要になる」として、意見を募っている。
「ふみコミュニティ」には、「メル友広場」以外にも「チャット広場」など、小学生から高校生をターゲットとする、匿名でコミュニケーション出来る場が多数存在する。これらの「広場」からも、「ご意見募集コーナー」へのリンクが張られており、広くユーザーからの声を集めようとする姿勢が伺える。同サイトは、今回の誘拐事件をきっかけに「匿名でのコミュニケーションをいかに安全に行うか」という大きな課題に直面している。