日本での不振が最大のアキレス腱
計画設定は全社だけでなくすべての組織と社員に設定されている。果てしない重圧に耐えられるのか、未達の挫折が訪れた時に至上命題の神通力は保たれるのか。これからは右肩上がりばかりではいかない可能性があるだけに企業風土も未知の領域に対応する必要が出てくる。
国内事業はとくに心配がある。志賀俊之COO(最高執行責任者)がいみじくも「日本を収益ある市場として維持していきたい」と語ったように、工場稼働率に寄与しない、もらいものの軽自動車でしか販売を増やせないようではリストラに追い込まれかねない。
現中計「日産バリューアップ」は08年度に420万台の販売をコミットメントとして公表している。05年度に比べ63万台、17.7%の増加に当たる。ゴーン社長は「バリューアップ以降の事業計画では30を超える商品を投入しこのうち少なくとも15車種を米国に投入する」と、自ら責任者を務める米国事業への傾斜を明確にする。ほかに成長を期待するのはBRICs、メキシコ、エジプトなど新興市場だ。
420万台計画で日本が寄与できるかは覚束ない。置いてきぼりになる恐れもあるがその責任者は志賀COOでゴーン社長ではない。ゴーン社長は日本事業の課題として「もっと軽を増やす必要がある」と、ある種の見切りともとれる発言をした。市場実態を見据えたリアリストの言ともとれるが、日産本体のことを考えれば志賀COOも言うように本当に必要なのは自社生産する登録車なのだ。日産の社員は「今年度販売が落ちていると言うが本当は来年度が一番きびしい。依然として量が期待できる新車が出ないから」と不安げに漏らす。日本での事業が日産にとってアキレス腱になりつつある。