民間指定確認検査機関のイーホームズ(現在は指定取消し)社長の藤田東吾被告は2006年10月18日、東京地裁から耐震偽装事件で有罪判決を受けた後の記者会見で「爆弾発言」をした。マンション販売・ホテル経営をしているアパグループの物件にも耐震強度の偽装があるという内容だが、同社は全面否定している。
「きっこの日記」で「予告」されていた
「きっこの日記」では記者会見に先立って藤田被告の声明を掲載
実はこの暴露発言、大人気ブログ「きっこの日記」で「予告」されていた。
06年10月17日に、藤田被告と親交がある筆者のきっこ氏は、「18日に判決が下るのを受けて重大発表をする」と書き込んでいる。きっこ氏は耐震偽装事件でいくつも「特ダネ」を暴露した実績があるため、内容が注目されていた。
「18日の午前11時前後に、藤田社長の判決が出たころを見計らって、ものすごい爆弾を落とそうと思う。(中略)特に、マスコミ関係の人たちは、今年最大のニュースになること間違いなしだから、くだらないタレントの追っかけなんかしてないで、明日の『きっこの日記』に注目してちゃぶだい‥‥なんて思う今日この頃なのだ」
そして18日10時半ごろ、「きっこの日記」で実際に重大発表がされた。藤田被告が記者会見で配布した資料とされる文書が、記者会見に先立ってこのブログに掲載されたのである。アパグループの物件にも構造計算に偽装があるという内容だ。
「イーホームズでは、平成18年2月に、アパグループのマンションの偽装を発見しました。アパのマンションやホテルの構造設計を一手に行なっていたA(日記では実名)という設計事務所の代表がイーホームズに来社して、『こんな偽装の手法は、姉歯より俺が先に初めた』と豪語しました。『建築確認を早く取るために、構造設計にかける時間が少ないから構造計算書を偽装(改ざん)するなんて、他(の構造設計士)にも沢山いるよ』と平気で言いました。(中略)その後、アパの取締役や責任者の方が来社して、アパに関する偽装の隠蔽や計画変更を要請しました。全く、ヒューザーの時と同様です」
藤田被告によれば、イーホームズはアパグループの3物件の偽装を確認し、国交省に通報してアパの物件を調査するように要請したが、アパは工事を止めず、国には「関知しない」と言われた、という。そして、これまで触れなかった理由については、「もし、言ったとしても、国は隠蔽するために何をするのか分らなかったし、社員もいたので、安全を優先しました」としている。
「事実無根で理解に苦しむ」
これについて、アパグループ社長室の担当者はJ-CASTニュースの取材に対して、
「(藤田被告が)何でこんなことを言うのか、事実無根で理解に苦しむし、困惑している。弁護士と相談して今後の対応について検討する」
と述べた。イーホームズが関わったアパの物件は非常に少なく、同社は他の物件についても偽装が行われた可能性を否定している。また、同担当者によれば、偽装した事実を藤田被告に打ち明けたとされるA事務所代表に同社が事実確認したところ、「(そんなことは)言っていない」と否定されたという。さらに、藤田被告が直々に設計事務所の者と面会したと述べていることについても、「藤田社長が事務所の人間に直々に面会することはない」としてその可能性は低い、としている。そしてさらに、次のように述べる。
「(藤田社長と)私どもは一切面識はないです。そうしたことをする必要もありませんでしたから。まるで自分が(アパと)やりとりしたかのように言うのはよく分からない。びっくりしただけでなく、迷惑なことです」
さらに同社は同日夜、元谷外志雄代表の名前でコメントを発表し、
「(藤田被告の主張は)全く事実無根であり、弊社の社会的信用を著しく失墜させるものであり、同氏を名誉毀損で告訴することを検討しています」
と、法的措置の可能性について言及した。