NTTレゾナントが2006年10月11日に発表した06年9月「goo」月間キーワードランキングの急上昇部門で、ダントツのトップになったのが「須賀川市立第一中学柔道部」だった。公立中学校がランキングトップになるのは極めて珍しい。2ちゃんねるにはこれまで14本ものスレッドが立ち、この少女の「応援サイト」も数多く開設されている。いったい何が起きたのか。
関心を集めているのは03年10月に須賀川市立第一中学柔道部で起こった事故。当時中学1年の女子生徒が、柔道部の練習中に頭を打って意識不明の重体になった。現在もこの生徒は意識不明で、生徒の両親は06年8月31日に「学校側が安全配慮義務を怠った」とし、県と市、怪我を負わせた元男子部員とその母親に対し、約2億3,000万円の損害賠償訴訟を起こした。
学校に「事故」隠蔽疑惑
事件が起こった須賀川市立第一中学校のウェブサイト。9月に入ってアクセス急増
この事件に関するスレッドが2ちゃんねるに立ったのが06年08月31日 10時06分。読売新聞がネットで06年8月31日03時03分に記事を流した。
「柔道部の練習中に部長の男子部員に数回にわたって道場の畳に頭から落とされるなどし(中略)、事故前の9月にも元男子部員との練習で頭を打ち約10日間入院しており、父親(50)は『学校が9月に対応していれば、10月の事故は起きなかった』と主張」。
これにすぐ反応があった。『完璧に犯罪じゃねえかよ、何考えてるんだ一体?』『普通に暴行事件じゃん。 犯人の男子部員は今何してるんだ?逮捕されてないんだ?』
柔道部元部長の生徒(身長180センチ、体重120キロとされる)への批判だった。学校側がこの事件を「隠蔽」していたことや、女生徒の両親には「3年たった現在も未だに事故報告も謝罪も無い」事がカキコまれると一気に「祭り」になっていく。
ワイドショーもこの件を取り上げた。
「学校に隠蔽疑惑 独占!中一少女部活事故の真相」を06年9月12日に放送したのはテレビ朝日「スーパーモーニング」。例えばこんな内容だ。(1)母親が学校に駆けつけたさい、失禁し呼吸困難だったにもかかわらず、救急車を呼んでいない(2)男子生徒が怒鳴り散らし畳や柱に女子生徒を数回叩きつけたことを隠していた(3)学校側から両親は「頭は一切打っていない」という説明を受けた(診察では頭部強打による急性硬膜下血腫)(4)市の教育委員会に事故報告書を出したが、「少女の母が学校や柔道部、柔道部員に責任は無いと言った」との捏造の記述をした(5)柔道部の父兄への説明会を開いた際、「大した怪我でないので、口外しないようにと」口封じをし、少女の両親は説明会に呼ばなかった。
そして、「事件を知れば知るほど腹が立ってしょうがない!」などのカキコミがネット上で氾濫する。
柔道部顧問らが書類送検される
「スーパーモーニング」の特集のインタビューで、校長は以上の指摘を全て否定か、解釈の違いだ、との発言を繰り返していた。しかし、05年9月20日に、当時柔道部顧問だった男性教諭と副顧問だった男性講師が「練習の監督を怠った」などとして業務上過失傷害の疑いで福島地検郡山支部に書類送検されている。読売新聞は同21日、「男性講師は文化祭の準備の仕事もあり、練習の始まる前と途中の約15分間立ち会ったが、事故が起きた時には監督していなかった。男性教諭は休みだった。同署は2人が安全注意義務を怠ったことが事故につながったと判断したが、調べに対し2人は『なぜ事故が起きたのかわからない。自分に責任はない』と容疑を否認しているという」と書いている。
この事件を知り、ネット上では少女を応援しようというスレッドも現れた。「須賀川市立第一中学校柔道部のリンチ事件で意識不明になってしまった少女を応援するサイト」では、千羽鶴やカードを贈る活動をしている。『女の子がびっくりして目を覚ますくらい鶴折るよ!』とメッセージが書かれている。NTTレゾナントはJ-CASTニュースの取材に、
「2ちゃんねるを中心とした支援活動がきっかけとなって、様々な報道で採り上げられたことがランキングの急上昇に繋がった。中学校がランキングのトップになるのは珍しいが、社会的な事件に関連していたので興味を持たれたのだろう」
と話した。
J-CASTニュースは、須賀川市立第一中学校に電話取材をした。電話に出た男性は、「学校のホームページへのアクセスや問い合わせが増えたのは9月に入ってから。いろいろ誤報が流れたせいだ」と話した。どこが誤報なのか聞こうとしたら、「もういいでしょ」と、一方的に電話を切られた。