韓国で日本車の人気が沸騰しつつある。2005年の韓国の輸入車登録台数で、トヨタ自動車の高級ブランド「レクサス」が初めて1位になり、06年もこの勢いが続いている。ホンダも台数を伸ばしたほか、参入間もない日産自動車の高級ブランド「インフィニティ」も定着しつつあり、韓国での日本車人気は続きそうだ。
これら日本車はすべて、日本などからの輸入車。現地での販売価格は「レクサスLS」の場合で、米国価格の2倍以上という”超高価格車”にもかかわらず販売が伸びる背景には、韓国人の自家用車に対する特有の消費行動に加えて、自動車メーカーの戦略があった。
独BMWがレクサスに抜かれる
韓国でも人気の「レクサスLS」。価格は米国の2倍以上だ
韓国輸入自動車協会によると、05年の韓国の輸入車登録台数は前年比32.4%増の3万901台。消費の回復傾向を追い風に過去最高を記録した。このうち、レクサスの販売台数は05年、前年比8.9%%増の5,840台となり、6年連続で首位を続けてきた独BMWの5,786台(前年比5.0%増)をわずかに上回った。
トヨタは01年から韓国で販売を開始。販売戦略も高級車としてのイメージ定着に集中し、アフターサービスの徹底も奏功した。
その他の日本勢では、ホンダが2,709台(同83.7%増)で4位。昨年から韓国市場に「インフィニティ」ブランドで参入した日産自動車は531台だった。
こうした勢いは06年も続いており、レクサスは8月までの累計で前年同期比25.6%増の4,254台でトップを維持、ホンダは同42.2%増加、インフィニティは実に7.7倍の台数を販売している。
こうした日本車人気の中で特筆すべきは、「価格が高い最上級モデルから先に売れること。加えて、何でも装着したフルオプションの車を求める傾向がある」(韓国の輸入車販売業者)ことだ。マッサージ器内蔵シートやリア席冷蔵庫など「およそ使うことがほとんどない機能でも装着したがる」(同)という。
上級モデルほど売れる理由は、 「見栄」
韓国経済は97年のIMF体制突入から急激な回復を見せた。これと同時に、個人事業主やベンチャー経営者を中心に富裕層が急速に増加している。日本でも"勝ち組・負け組"といった表現で、格差が広がっているとされるが、韓国の状況は日本以上のものがある。日本車を含む輸入車は、旧来の日本に対する国民感情をも超え、日本の経済や消費の動向に強い関心を持つ、こうした新たな富裕層の旺盛な購買力に支えられて販売台数を伸ばしてきた。
また、上級モデルほど売れる理由は、こうした富裕層が持つ"見栄"に由来する。仲間同士で、「お前の車には、この装備が付いていないじゃないか」と言われることへの防御意識から、何でもありの車を購入する、と言われている。
トヨタを筆頭に、年間4万台以下という市場全体の規模からしては小さい輸入車マーケットで積極的に拡販戦略を展開する理由は、このように台あたりの収益率が高いという背景がある。
また、日本の自動車メーカーにとって韓国市場が世界戦略の試金石と位置付けられるという側面もある。韓国の自動車に関する基準の中で、とりわけ車内外の騒音に関する規制は「日本よりもはるかに厳しい」(前出の輸入車業者)という。この厳しい規制をクリアーした製品を他の市場に展開することは比較的に容易なことになる。
貧富の差が顕著になっているのは韓国ばかりではない。自由主義経済に移行したロシアや経済の自由化が進む中国などでも、旧国営企業のオーナーやベンチャー経営者を中心に富裕層は急拡大している。こうした国の輸入車市場を見ても、日本車を中心とする高級輸入車の販売が伸びている。日本の自動車メーカーはこれらの地域での拡販にも力をそそいでいる。