外資系のJPモルガン証券は東京証券取引所の「バスケット取引」の売り注文で、誤発注した。モルガンは誤発注のミスに気付き、買い戻すなどの措置をとったとみられる。ただ、意味不明な文言が並ぶニュースリリースを出すなど情報公開が不十分で、同社のずさんな対応が浮き彫りになった。
JPモルガン証券が「日経225バスケット取引について」という表題の、わずか6行のニュースリリースをマスコミ各社向けにファクスしたのは2006年9月25日午後10時近くになってから。
東証関係者もあきれ顔だった
マスコミから「意味不明」と言われたプレスリリース。わずか6行だ
同日の後場寄り付き時に「海外関連会社からの日経225バスケットの売り注文を発注する際、誤った入力によりTOPIX連動型バスケットの売りを発注してしまいました」と誤発注の事実を認めた。が、続いて「当該発注により、市場へ影響を与えた可能性があると考えられることから、ここに公表します」としながらも、「個別銘柄の価格には重要な影響はなかったと認識しております」と、意味不明な文言が並んだ。
これには東証関係者もあきれ顔だった。「何を言いたいのかわからない。個別銘柄に重要な影響がなかったのなら、市場へ影響を与えた可能性もないのではないか」と苦言を呈した。この夜、東証は同証券に誤発注の規模や買い戻しなどについて詳しい報告を求めたが、満足いく回答は得られなかったという。
マスコミ各社の問い合わせにも「のらりくらり」
誤発注を出した銘柄数や売値、買い戻しにかかった金額などについて発表し、「市場に影響がなかった」ということを客観的に説明しようとするのが普通だが、JPモルガン証券はその後も一切のニュースリリースもなく、マスコミ各社の問い合わせにも「のらりくらりで質問に答えられず、当事者意識のかけらもなかった」(大手マスコミ)という。
東証の西室泰三社長も翌26日午後の会見で「今、(JPモルガン証券から)うかがっている範囲では、特に東証として何らかの措置をするようなことではないと思っているが、全貌がはっきりしてから東証としての対応は決めざるを得ない」と述べ、情報公開が遅く、不十分であることを認めた。
誤発注のあった25日午後の東証の後場寄り付きの値動きを見ると、TOPIXは午前の終値に比べ10ポイント下落したが、直後に値を戻す場面があり、買い戻されたとみられる。結果的に同日の日経平均株価やTOPIX (東証株価指数)の終値に影響はなかったとみられるため、マスコミ各社の報道も一部にとどまったが、JPモルガン証券の対応のお粗末ぶりは東証やマスコミに広く認識されることになった。