「ホリエモンが本当に事件の主導者なのか!?」。そんな疑問を投げかける報道がどっと出てきた。ライブドア事件の裁判で、ライブドア株売却益を同社元取締役の宮内亮治被告、元ライブドアファイナンス社長の中村長也被告が勝手に動かしていたことが分かったのがきっかけだ。堀江被告の知らないところで事件が起きた、という事実を補強するものだ、というのが弁護側の言い分だ。
2006年10月5日の日本経済新聞は、同4日の公判で中村被告がライブドア株売却益のうち約1,300万円を私的に流用したことを認めた、と報道した。弁護側が「堀江被告が事件を主導」を否定する根拠として、株売却益の一部が香港の企業に送金され約2,000万円を中村被告が引き出したと追及していた。
宮内の「背任」を隠した?
「ホリエモン主導説」に疑問を投げかける報道相次ぐ
日経新聞では「中村被告が、香港への送金について元副社長への報酬とした上で『堀江さんの了承のもと進められていると思っていた』と述べると、堀江被告が苦笑いを浮かべ『おーい』と口走る場面もあった」と書いている。
香港でのカネの流れについて詳しく書いているのが「週刊朝日」だ。06年10月13日号に「宮内の”背任”隠した東京地検の大失態」という見出しの記事を掲載した。同誌によると、ライブドアが04年3月に人材派遣会社「トライン」を株式交換で買収し、買収した際に新株を発行。この株は沖縄で死亡したライブドアグループ投資会社の野口英昭元社長らが香港に作った会社に移された。この株を売却した利益のうち、野口元社長に1億5,300万円を報酬として支払った。これについて同誌は、「宮内被告が、ライブドアの機関決定を経ないで、野口氏に追加の報酬を払った、という事実である。さらに、最終的には、売却益のうち1億5300万円が、宮内被告とライブドアファイナンス前社長の中村長也被告が香港で設立したペーパーカンパニーの口座に振り込まれていた」と書いた。
つまり、怪しいカネの流れを見ても、ホリエモンは何も知らなくて、側近が勝手にやっていた可能性が示された形なのだ。
検察側と、堀江被告は無罪とする弁護側との壮絶な戦い
「AERA」も06年10月2日号で宮内被告、中村被告にまつわる不透明なカネの問題を取り上げた。先の香港を舞台にした部分はこう書いている。「簿外に眠る海外資産の存在に気づいた堀江はこう言って驚いたという。『えっ、ライブドアのカネで買っていたんじゃなかったの?』。自分がリスクを負わされ、自分の保有資産をもとに錬金術めいたことが行われていたことに、まったく気づいていなかったという」。
となると、宮内被告などが「ホリエモンの指示で事件が進行した」といった発言も怪しくなってくる。検察と宮内被告が「共謀」してホリエモンを主犯にしようというストーリーができているという報道もあり、週刊朝日ではホリエモンの弁護人である高井康行弁護士の、こんなコメントを載せている。
「(宮内被告が)検察が望む供述をすれば、自分の犯罪が捜査・起訴の対象にならないのでは、と暗に考えさせて調書が作られ、無罪の堀江被告が起訴された。控訴棄却を申し立てます。同時に、大鶴基成特捜部長らの証人尋問を要求します」
「AERA」では、宮内被告が隠していた事実が今後、裁判で明るみになるだろうとし、「『(味方の宮内被告)守りの砦』がガラガラと音を立てて崩れるのは、東京地検特捜部が描いた『堀江主犯』という単純すぎる構図だろう」と結んでいる。
「ヒルズ黙示録」などの著書がある「AERA」の大鹿靖明記者は、これからの裁判の展開についてJ-CASTニュースにこう答えた。
「堀江被告が主犯とする検察側と、宮内、中村が事件を主導し堀江被告は無罪とする弁護側との壮絶な戦いだ。堀江被告は(先の)海外資産など自分が全く知らないところで進んでいたと言っているが、では、今回の事件全体について何も知らなかったということはないだろう。おそらく、事実は検察側と弁護側の真ん中にあるのではないか」