発売が迫ってきたWindows XPの後継OS(基本ソフト)、「Windows Vista」。操作性や安全性が向上するというが、「これまでのOSで過去最低の品質」という声も聞こえてくる。しかも、その「声」の発信源が、米マイクロソフト社(MS社)の副社長まで務めた人物なのだとなると、穏やかではない。何故、こんな声が飛び出したのか。
「最低品質」発言が飛び出したのは、MS社日本法人の初代社長や、会長などを務めた古川亨さんのブログの「大浦博久氏のマイクロソフト退社と昨今のマイクロソフト事情」と題する2006年10月4日付けの記事だ。
日本法人の最高技術責任者を務めた経歴の持ち主
古川さんのブログ。「2005年9月のバックナンバーをクリックしますと、IEが暴走して死にます」との注意書きがある
同ブログは、古川さんが日本法人の最高技術責任者(CTO)と米MS社の副社長を兼任していた04年9月にオープンし、頻繁に更新されている。古川さんは05年6月にMS社を退職し、現在では「慶應義塾大学デジタルメディア・コンテンツ統合研究機構教授」をしている。
同ブログによると、06年10月2日、MS社日本法人の常務取締役を務めた大浦博久氏が退社するのにともなってパーティーが開かれ、その席で、古川さんがブログで利用しているMS社のサービス「Windows Live Space」の担当者に、サービスの不具合について苦情を言ったのだという。この苦情に対して、担当者から帰ってきたのが、こんな言葉だそうだ。
欠陥部品が混じった製品が出荷される?
「古川さん、そんなこと(編注: Windows Live Spaceの不具合)を問題にしないでくださいよ。Windows Vistaの品質なんてRC1(出荷予定版の第1版)がレリースされたのに、もっとヒドイんですから…。多分過去出荷したWindowsのバージョンに比べて最低の品質だと思います。だって、出荷版のビルドエラーを起こして、マスターソースがコンパイル・リンクができなくなっちゃたけど、まぁ、良いかってノリでレリースしてしまってるんですから」
コンパイル・リンクとは、人間が記述したプログラム「ソースコード」を、コンピューターで実行できる形式に変換する作業だ。つまり、この作業ができないということは、コンピューター上で動かない「欠陥部品」が紛れ込んでいる、ということになる。しかも、この証言が本当だとすると、欠陥部品が混じった製品が出荷される、ということだ。
Vista11月発売には変更がない
MS社日本法人の広報部はJ-CASTニュースの取材に対し、
「お問い合わせいただきました件でございますが、憶測に基づく情報についてはコメントを差し控えさせていただきます。Windows Vistaは企業向けに本年11月、一般ユーザー向けに来年初頭の発売を予定しています」
と回答、コメントを避けた上で、発売時期に変更がないことを強調した。
ちなみに、古川さんがパーティーの場で「Windows Live Space」の担当者に伝えたクレームとは、ブログに表示される、バックナンバーの「2005年9月」という箇所をクリックすると、ブラウザ(インターネットエクスプローラー、IE)がフリーズすることと、「Windows Live Space」はマッキントッシュ用のIEでは表示することが出来ない、ということだ。
このトラブルについては、同広報部は06年10月11日、以下のコメントを寄せた。
「古川さんが指摘されている事象はめったに起こらないケースであり、通常の記事の書き方をしている限り問題は一切起こりません。当該月の記事の中にHTMLの書き方上、問題のある記事があります。Windows Liveスペースのような複雑な設計のサイトでは、その種のHTMLの書き方が指摘されているような現象を起こす場合があります。このことは確認済みです。こちらについては、Windows LiveスペースのHTML編集モードを使い、記事の「再発行(re-publish)」をしていただくことで解決できます。なお、Spacesでは影響を受けるお客様が多い問題から順次対応を進めております。本件については、現段階ではお問い合わせを受けた際にご案内している次第です」
リンクをクリックしただけでフリーズする同社のブログサービス。OSに関しても、「信頼性に疑問符」という声が増えてきそうだ。