毎日新聞大分県版の記事がネット上で批判にさらされている。公務員や新聞記者の飲酒運転が懲戒免職などの重い処分を受けていることについて疑問を呈する内容が盛り込まれた記事だった。さらに、批判は「格差社会の憂さを公務員たたきで晴らしていないか」という見方にも一理ある、という部分にも向けられた。
即、懲戒免職にするのは疑問がある、と主張
大分支局長が執筆している「おおいた評論」。ネット上で波紋を呼んだ
批判にさらされているのは2006年9月25日の大分県版に掲載された毎日新聞大分支局長が執筆した「おおいた評論」。「ことわざから」と題された記事のなかで、支局長は、
「飲酒運転をした公務員を事故の有無にかかわらず即、懲戒免職にするのは、法律の『比例原則』に基づいて疑問がありはせぬかと先週の当欄で書いた。(中略)大分でも県土木建築部職員が飲酒運転で事故を起こし逮捕された。県庁には1週間で100本を超す抗議が寄せられたそうだ。大半が懲戒免職を求める内容だったという。『飲酒運転は誰でも起こしうる。今日の被害者が明日は加害者になるかもしれない。格差社会の憂さを公務員たたきで晴らしていないか』というのが先の(前出の)弁護士の見立て。一理あるのでは。罪なき者のみ石もて打て。」
などと述べている。この評論のなかでは、飲酒運転に対する厳罰が一過性のものでは困るとの主張も書かれているが、ネット上では「飲酒運転を容認している」と捉えられたようだ。2ちゃんねるでは次のような批判のカキコミがある。
「毎日新聞が飲酒運転肯定したってこと?これって凄く反社会的な行為なんじゃないの?」「よくこんなことを平気で記事にできるなぁ」「飲酒運転したやつを擁護するやつはおかしい」「アカピの記者が懲戒免職になったから恐れているんだろ>毎日ウンコ記者」
「1週間前には飲酒運転はけしからんという記事を書きました」
新聞が発刊された06年9月25日には支局に問い合わせが一切なく、翌26日から問い合わせや苦情が集中して寄せられたというが、この日は2ちゃんねるに「『"飲酒運転批判、格差社会の憂さを公務員叩きで晴らしてないか"の声も』…毎日新聞」と題されたスレッドが立った日でもある。つまり、ネット上でこの記事がさらに大きく伝えられ、批判の声が高まったというわけだ。なかには、同社大分支局の電話番号と支局長の名前を貼り付けたカキコミまで登場している。
支局長本人はネット上での批判に対して次のように話す。
「1週間前には飲酒運転はけしからんという記事を書きました。しかも、大分版では飲酒運転防止キャンペーンまでやっています。それにもかかわらず、あたかも私が飲酒運転の処分がいけないとか、飲酒運転を追認しているかのように捉えられている。すごく違和感を覚えます」
支局長は2006年9月18日付朝刊の「他人事ではない」と題した評論のなかで、福岡市職員の飲酒運転による幼児3人死亡事故に対し、「飲酒運転で事故を起こせば、懲戒免職を含む厳しい処分は当然だろう」などと述べていた。支局長は「飲酒運転即懲戒免職は行き過ぎ」と考えてはいるが、それも「罪の重さによって処罰するべき」という法律の比例原則を適用したものだ、という。
支局長、取材に逆ギレ
そうだとしても、「一理ある」としている「格差社会」のくだりになると、話はちょっと違う感じもする。
「国民が公務員の飲酒運転を叩くのは格差社会のせい…って、思いっきりバカだろ毎日」
こうした批判が掲示板にも書き込まれている。
この点について、J-CASTニュースがこの支局長に再度電話で取材してみたが、明確な回答は返ってこなかった。そして怒りだし、「今までの取材はなかったことにしてほしい」と迫ってきた。
大分支局の上部組織にあたる西部本社編集局の幹部(福岡本部報道部長)は「記者への個別の取材に応じてない」とした上で、「本人が出すなというものを出しちゃいけないでしょ」と、記事の掲載を拒む姿勢を示した。ちなみに、記者が個別に取材に応じてはいけない、という慣例や規定があるわけではない。