「精神的にいられなくなってタヒチで暮らすようになった」
このような考え方は01年1月15日掲載の「メインディッシュはまだ?日本人の精神性について」でも繰り返される。
「私の男友達は、常々『日本は世界で最高の社会主義国だ』と言っている。個人が国家と融合し、そのため利益のために一丸となって働くということでは、日本人という精神性そのものが社会主義的であるという意味だ。(略)しかし、これは個人の自由な主張を犠牲にした上で成り立っている美点であることを、私たちは忘れてはいけないのではないだろうか」
つまり、都市生活のなかで、日本人は没個性化し自由を犠牲にしているというのである。「生」の充実という点でも、「死」を隠蔽している点でも、日本では生の充実を得られない。つまり、都市社会生活から離れなければならないのだ。
坂東さんは、02年に『曼荼羅道』で柴田錬三郎賞を授賞した式で、タヒチに住む理由を次のように述べている。
「日本という国に、日本という社会に精神的にいられなくなってタヒチで暮らすようになった」