「記事を読んだ人々が、扇動されることが怖い」
オシム監督がユーゴスラビア代表の監督だった頃、メディアは政治に染まっていた。民族間の対立が深刻な連合国だった同国では、新聞記者が自民族の選手だけに注目し、ナショナリズムのプロパガンダに利用しようとしていた。オシム監督は同書で次のように述べている。
「記事自体は私にとってはプレッシャーでも何でもない。あいつらは書きたいことを書くだけだ。ただそれを読んだ人々が、扇動されることが怖い」
日本代表はW杯ドイツ大会で散々マスコミに煽られたすえに、「1分2敗」で1次リーグを敗退している。オシム監督が繰り返す、日本の記者への鋭い切り返し。これは、彼の日本のマスコミ教育、といってもいいだろう。