液晶テレビのヒットなどで、ソニーの業績は急回復している。ただ、「完全復活」するには、赤字のゲーム部門の立て直しが急務で、次世代の家庭用ゲーム機「プレイステーション3」(PS3)の成功にかかっている。
PS3がソニー復活の鍵を握る
ソニーが7月27日に発表した06年4-6月期連結決算は、本業のもうけを示す営業損益が270億円の黒字と、前年同期の66億円の赤字から大幅な黒字転換を果たし、復活に向けて着実な業績を残した。中でも立て直しが課題だったエレクトロニクス部門の営業損益が、液晶テレビ「ブラビア」のヒットやデジタルカメラの好調さが追い風になり、前年同期の267億円の赤字から474億円の黒字へと、一気に700億円以上改善した。これまでの業績回復は金融部門がけん引役だっただけに、主力事業の回復にソニーは自信を深めている。
テレビ事業全体では下期に黒字化する
大根田伸行最高財務責任者(CFO)は会見で、「エレクトロニクス部門は回復への道筋を着実に歩んでいる」と胸を張った。4-6月期の営業黒字は04年以来2年ぶり。ビデオカメラやデジタルカメラも利益増に貢献した。特に高画質のハイビジョン対応ビデオカメラは、他社製より数万円程度高価ながら市場で高く評価された。デジカメも欧州を中心に好調だった。ブラウン管テレビを含むテレビ事業全体は110億円の赤字だったが、売上高は前年同期の1.7倍と回復は著しく、下期には黒字化する見通しだ。
ソニーは大ヒットした平面ブラウン管テレビを抱えていたため、薄型テレビのへの移行が遅れ、エレクトロニクス部門の不振が深刻化。05年6月の出井伸之会長退任の大きな要因になった。後を継いだハワード・ストリンガー会長-中鉢良治社長体制は「電機の復活なくしてソニーの復活なし」として、07年度に同部門で売上高営業利益率4%を達成する経営再建策を発表。この4~6月期の同利益率は4.5%と、目標を上回った。
07年3月期でゲーム部門の赤字約1,000億円
ただ、今回の決算でソニーが完全復活を果たしたと言うのはあまりに時期尚早だ。利益の回復は円安・ユーロ高に助けられた部分が大きい。市場での競争が激しい薄型テレビなどデジタル家電は「今後も価格が年20~30%の下落が続く」(大根田CFO)見通しで、本業で安定的に利益が稼げる体質に戻ったとまでは言えないからだ。
そんな中、ソニーの命運を大きな左右するといわれるのが、11月に発売する次世代の家庭用ゲーム機PS3の売れ行き。ソニーはPS3を単なるゲーム機ではなく、次世代DVD「ブルーレイ・ディスク」の再生機として、薄型テレビやビデオカメラなどと連携するデジタル家電の中核的存在と位置付け、エレクトロニクス部門復活の中核的役割を期待している。巨額の開発費を投じたため、07年3月期の通期決算でゲーム部門の赤字約1,000億円を見込んでいるだけに、PS3の成功はストリンガー体制の命運を握っているともいえる。
次世代ゲーム機では、最大のライバル、任天堂の「Wii(ウィー)」も年内に発売される予定だ。年末商戦でPS3が期待通りに売れるか。4-6月期決算でひとまず”復活”を果たしたソニーの、当面の最大のハードルになる。