ボクシングの亀田興毅選手の「疑惑の判定」を巡るバトルがヒートアップする中、ネット上では「世論」誘導のため、「工作員」が暗躍している、という見方が公然と語られている。誰かに頼まれて、組織的に「亀田擁護」の書き込みをしている人がいる、というのだ。
「工作員説」が急浮上したのは、2006年8月7日に放送されたテレビ朝日の「スーパーモーニング」で、亀田選手の父・史郎さんと漫画家のやくみつるさんが激しいやりとりをしてからだ。特に、「ネットの書き込みを人の目で監視するサービス」を提供している都内のベンチャー企業A社のアルバイトが「工作員」だ、という指摘が多い。
掲示板を監視し、企業を擁護する「工作員」
ネット上には「工作員」が暗躍?
例えば、掲示板ではA社はこのように紹介されている。
「Q.「A社」ってなぁに?
A.企業(ここではTBS)に依頼されて、掲示板を監視し、企業(ここではTBSと亀一家)を擁護するレスをするお仕事をしている方々です」
では、実際の「工作活動」は、どのように行われているのだろうか。ネット上では、以下の発言が「工作員」によるものだとされている。
「やくみつるってこんなに低俗で卑怯なやつだったんだ。亀田父なんてTV出演に関してはド素人だろ?何、番組総がかりでド素人糾弾してんだよ。こんな気分の悪いTV番組初めて見たよ。嫌いだった亀田父をちょっと尊敬したよ。俺だったらその場でやくみつるの頭蓋骨割ってると思う」
ちなみにこの発言をした同一人物は、15分後にこんな発言をしている。
「まあ、私もこういう書き込みするのが業務なので。給料は手取りで16万です」
うかつにも、工作員が自分の身元を明かしてしまっているのだ。この発言をきっかけに、工作活動のスキルの低さを揶揄する書き込みが増えた。
TBSは「その件についてはよくわかりません」
ほかにも、「工作活動」だと疑われているのが、同一人物による以下3つの発言だ。 TBSの放送免許剥奪を求めるネット上での署名活動を、発言ごとに角度を変えて批判している。
「お前らが騒いだってTBSのような大企業は揺るがないよ。マスコミ舐めんな」
「ネット署名とかは止めたほうがいいよ。俺達の個人情報が危険に晒される。この御時勢、何に使われるか分かったもんじゃない」
「あーあ、署名した先で危険な団体が個人情報を利用してるかもしれないのに・・・ 色んなヤバイ話もあるしね。俺はネット署名などしない。そもそもネット署名など同じ人間が偽名で何度も出来るので全く効力がない」
もっとも、現状では、「亀田劣勢」の状況を覆すのに成功しているとはいえなさそうだ。
この工作員が実際にA社に雇われているかどうかは分からない。ただ、ネット上ではA社が06年5月29日付けの大手新聞で「掲示板の中傷が加熱した場合は、書き込みで誘導し、悪意を緩和させる措置も取る」と紹介されていることを根拠にしたようだ。実際、A社が「亀田擁護の工作活動」を行っている、と決めつけるカキコミが多い。
8月9日14時ごろ、2ちゃんねるの書き込みの削除を要請する「削除依頼」に、A社の名前で、こんな書き込みがあった。
「当社社員の顔写真が公開され、ひどい中傷を受けています。 写真自体は求人媒体に掲載されたものですが、肖像権の問題等含め、社員の生活の安全を脅かす危険もありますので、 削除をお願い致します。なお、当社は亀田選手、TBS様とは一切関係御座いません」
A社とTBSは関係ない、との主張だ。J-CASTニュースでは、A社の社長に取材を試みた。電話に応対した若い女性は、
「社長は不在です。私は『TBSとは関係ない』と答えるように言われています」
と話した。TBSと契約しているのか、という問いには「それは答えられない」だった。
一方、TBS広報部にはネットで起きている事態を説明したが、「その件についてはよくわかりません」と、特に肯定するでも否定するでもないコメントが返ってきた。