金融機関は潰さない、潰れない、という印象を払拭する
06年度の金融環境はこれまでと大きく違う。ゼロ金利解除にともない、地域金融機関の経営が一気に悪化する可能性は、前述にあるように高まっている。
そうした状況の下で、地域金融機関では、経営統合や合併の動きは加速している。こうした中には救済色の強い組み合わせがないわけではない。つまり、経営破綻を回避し、ペイオフの発動を阻止するために合併という手段が使われているというわけだ。
一方、キャッシュカードの偽装問題やカネボウ、ホリエモン事件など企業の相次ぐ粉飾決算をきっかけに、金融庁は昨年来、投資家や預金者の保護に全力投球してきた。一連の法的整備を終え、今度は預金者らのモラルハザード、金融機関は潰さない、潰れないという印象を払拭する必要がある。その特効薬がペイオフであり、地域金融機関では、金融庁がその発動をちらつかせることで、「預金者らにも緊張感を植え付けようとしている」(大手信金の役員)とみているわけだ。
ある信用金庫の役員は、今回の金融庁人事について、「ペイオフ解禁の準備、そして解禁を実施した五味長官に、発動とその影響まで責任もって見届けてもらおうという思いが透けて見えます」と解説する。
「銀行ではインパクトが強すぎます。そうなると信用金庫や信用組合。でも、地域が狭くなるほど取り付け騒ぎも限定的で、どこまで影響があるのかは不透明です」(前出の信金役員)
そんな"実験"に都合のよい金融機関があるとも思えないが、「ペイオフの発動は間違いなくある」(メガバンクの関係者)との見方だけは一致している。