ダイヤモンド社が発行する「『株』データブック全銘柄版」が休刊する。この種の「企業情報本」では、東洋経済新報社が発行する「会社四季報」と日本経済新聞社の「日経会社情報」が双璧。そこに新規参入を試みたが、「盗作騒動」などでボロボロになった末に撤退するという形だ。
ダイヤモンド社は2005年12月15日、東洋経済・日経の牙城を崩そうと、「『株』データブック全銘柄版」を鳴り物入りで創刊した。
東洋経済が販売差し止めを東京地裁に申請
東洋経済「四季報」にやられた
ところが創刊の日に、ライバルの「四季報」を発行する東洋経済が「データブック」の販売差し止めを求める仮処分を東京地裁に申請したのだ。「四季報」と類似した部分が多数あり、著作権侵害にあたる、というのがその理由だ。ダイヤモンド社は、当初は
「独自のスタッフが執筆した。著作権上の問題に抵触することはない。仮処分申請はきわめて唐突感がある」
と強気の姿勢だったが、06年3月1日には無断転載を認めて謝罪に追い込まれた。
この騒動の裏側を、週刊朝日(06年1月6日/13日号)が報じている。「四季報」と酷似した表現が多く見られるほか、企業に対して配布したアンケート用紙に「株式に関わる項目についての注意点」として「基本的に、各項目の定義などについては、『四季報』と同様です」という断り書きがあったのだという。「株式についてのコンテンツは、『四季報』と同じような内容です」と自ら宣言しているようなものだ。
ダイヤモンド社の浜辺雅士編集長(当時)は、週刊朝日に対してこのように答えている。
「アンケート調査したところ、企業から数字の表記方法に関する問い合わせが多かったので、四季報に倣ってほしいと伝えた」
「短い文章で投資家に重要な情報を伝えようとしたら、文章が似るのはしかたがないと思います」
「盗作騒動」とは関係ない?!
ダイヤモンド社の総合案内は2006年8月1日、J-CASTニュースの取材に対して『全銘柄版』については6月15日発売分を最後に休刊する、と明らかにした。その理由は、500銘柄に絞って掲載し、兄弟版ともいえる『「株」データブック 厳選銘柄版』と内容が重複するためとし、「盗作騒動」との関連については、「別件です。関係ありません」と説明している。
ある大手ビジネス誌関係者はこう語る。
「丸めた数字でみると、『四季報』のシェアは70%を保ったままですが、参入直後には10%あったダイヤモンドの『データブック』のシェアは盗作騒動後に5%まで急落しました。そのおかげで、シェア20%だった日経の『会社情報』は25%まで回復しました」
「初心者でもすらすら読める」というのが売りの「データブック」だったが、1936年に創刊された老舗の「四季報」にボコボコにやられた、ということのようだ。